「もう、あんな風に飛び出してきちゃって良かったんですか?帰ったら余計に怒られると思うんですけど」
「はは……なんというか、子供の頃から染み付いている癖というか、衝動的にな。お前だって、笑顔のままフレデリクが早歩きで迫ってきたら逃げたくなるだろ?」
「それは、まあ。気持ちはわからなくないですけど」
群青色の瞳を照れくさそうに瞬かせる青年が、イーリスの王子だと誰が思うのだろうか。
ルフレはクロムの姿に溜息をつくと、行き交う人々にぶつからぬよう注意を払いながら歩みを進める。
細かな備品が足りないことに気づき買い出しに出ようと馬に跨ったはいいが、出発間際に半ば強引にクロムが飛び乗って来たのは想定外だった。「いいから早く出発しよう」と急かす彼を疑問に思ったが、背後から凄まじいプレッシャーを放ちながら迫り来るフレデリクに気づき、思わず手綱を引いて駆け出してしまったのが先程の話。
聞けば鍛錬に張り切りすぎた為か、訓練中に自警団アジトの壁を三箇所程度壊してしまったらしい。普段は穏やかな騎士が穴だらけになった壁を見た瞬間、長年の付き合いがあるクロムでさえ気圧されるような笑みを浮かべた為に流石のクロムも思わず逃げ出してきたらしい。怖いもの無しで向こう見ずに見える彼も、フレデリクには頭が上がらないのだと思うと少し愉快ではあるが。
確かにあのまま捕まっていたら恐ろしい目に合うことは想像に容易い。だからといって逃げても一時しのぎであり、ルフレまで共謀者として叱られる可能性が出てくるのだからたまったものではないのだ。
隣を歩くクロムをチラリと見る。象徴であるファルシオンではなく鋼の剣を剣帯から下げ、いつもさらけ出している聖痕を上着で隠している彼が「本当にすまん」と謝りながら申し訳なさそうにしているのを見ると、呆れや怒りが薄れて行くのを感じた。普段は精悍な顔立ちで戦場を見つめる彼だが、こうしていると普通の青年に見える。ルフレは小さく笑みを浮かべて肩を竦めてみせた。
ルフレも目立たないようにと、動きやすい格好ではあるが町娘に扮した姿をしている。こうして雑踏を歩いていると、到底一国の王子と軍師には見えないだろう。
(もしかして、デートっぽく見えちゃってたりしませんかね?)
きっとクロムにその気は全くといってないだろうが(そもそも付いて来た理由が子供じみている)、こうしてすれ違う人の何人かはそう勘違いしているのではないかと想像し、こっそりと顔を緩めてしまった。しかし直ぐに彼には女扱いすらされていなかったことを思い出して顔を引き締める。
(クロムさんからしてみれば、私は親友以上妹未満みたいなものですからね……)
だからこそ、性別も身分も関係なくこうして遠慮なく言葉を交わせる仲になったのも事実ではあるが。
路の途中で恋人同士が手を繋ぎ、笑い合っている姿を見て心が重くなる。かといって、クロムとそういう関係になる自分の姿が想像できなかった。
甘い言葉を交わし合い、抱き合い慈しみ合う。軍内に恋人や家庭を持っている者はいるが、記憶がないルフレはそういう愛情にピンと来なかった。ただ、クロムに対して友情以上の感情を抱き、もう一歩進展したいという気持ちが確かにこの胸には蟠っているのは確かである。もっと触れたい、寄り添いたいのだ。
「帰ったらちゃんと謝ってくださいね?それについてきたからには、一緒に買い物を手伝っていただきますから」
「ああ、それはわかっている」
だけど彼にこの気持ちを悟られるのはなんとなく恥ずかしくて、わざと彼より一歩先に進んでつっけんどんに言ってみせる。「荷物持ちでもなんでもやるよ」と肩を竦めてみせるクロムの笑顔が眩しくて、気恥ずかしくなりルフレはぷいっと顔を背けた。些細なことで脈打ってしまう心臓に、いつからこうなってしまったのだろうかと自分を情けなく感じてしまう。
その時視界の端にチラリと見えた深い青。引き付けられるようにその色を追ってしまい、無意識に歩みが遅くなっていた為か、向かいから来た通行人とぶつかりそうになってしまった。
「きゃっ」
「ほら。ちゃんと前見てないと危ないぞ」
背後のクロムに肩を引っ張られ、現実に引き戻される。
衝突は免れたが、強く言った手前彼にたしなめられた気恥かしさに赤面した。
「ご、ごめんなさい。有難うございます」
「気をつけろ。……これだけ賑やかだと目移りしてしまうのもわかるがな、何か気になるものでもあったのか?」
クロムに尋ねられ、ルフレは思わず視線を先程の青色へと向ける。
そこは装飾品の露天商であった。盛況する市場の中でそことなく怪しげな雰囲気を漂わせているものの、並べられている商品は異国めいたデザインのものが多く何故か引き付けられたのだ。
(ああ、これだったんですね)
露天の前に並べられている群青色の石がはめ込まれたペンダント。
ツヤリと磨かれたそれは太陽の光に照らされて清涼な輝きを放ち、ルフレの目を捉えたのだ。
「ちょっと気になってしまって。少しだけ見ていってもいいですか?」
「別に構わんが。……お前もそういうの好きだったんだな、戦術書や本にしか興味がないかと」
「し、失礼ですね!私だって一応女の子なんですから!」
「あー、そうだったな。すまない」
「なんですか、まるで心の篭っていない謝罪は!!」
相変わらず女だと思っていないかのようなクロムの態度に怒る気すら失せてしまい、頬をふくらませたままズカズカと露天商の前に歩み寄った。
年寄りの細工師はチラリと見ただけで視線を地に戻す。それをいいことに、ルフレは気軽に先程から気になっていたペンダントを観察した。
大粒の石が嵌められているが、しっかりとした素材で作られている為丈夫そうだ。
濃く不透明な藍色の石は夜空のようで、星粒のような金色まで所々に輝いていた。銀の淵には咒いのように文様が刻まれているが、何の言葉かまではわからない。ファルシオンに刻まれている文字に似ているかもしれない、そう首を傾げた時今まで黙っていた細工師がポツリと呟いた。
「お嬢さん、それはお守りだよ」
「お守り、ですか?」
「ただのお守りじゃない。目先の幸運を期待するならこの石は持っていけないよ。この石は、持ち主に時として試練を与えることがある。でもそれを乗り越えれば、他人や自身の邪念をはねのけ真の幸福を得ることができるのさ」
確かに持ってみると予想以上にずっしりと重く、この目が冴えるような青さの石は装飾品気分で持つには重すぎるかもしれない。
だからこそ惹かれた。本当に迷った時、誤った時、導いてくれそうな重厚さがそこにはあったのだ。
「綺麗だな。欲しいのか?」
いつの間にか隣に立っていたクロムに驚き、ペンダントを取り落としそうになってしまう。
手元をじっと見つめてくる彼の瞳がこの石の色に似ており、だから強く惹かれたのかもしれないと気づかされて鼓動が跳ね上がった。
「い、いえ。綺麗だなーとは思ったのですが、その……今はいいかな、と。私個人で使えるお金もそんなに持ってきてないですし」
クロムに女性として見られていない上に、彼に似ていると思ってしまった為かなんとなく素直に欲しいと言えなくて、商品を戻そうとしてしまう。すると、それまで表情なくこちらを見ていた細工師がニヤリと口角を上げた。
「そうそうお嬢さん、この石にはこんな意味もある。『恋人たちの愛と夢を守る』、さ」
「!!」
今度こそ動揺を隠しきれず、ペンダントがポロリと手から落ちた。
それは反射的に伸びたクロムの手によって受け止められたが、ルフレは完全に取り乱してしまいあわあわと細工師に弁解を図る。
「ち、違うんです。彼とはその……上司と部下、いえ、友達なんです!だから、そのそういう関係じゃ」
「?ルフレ、顔が赤いぞ。体調でも悪くなったか?」
「おや、そういうことか。古くからの強大な恋守りとしてもいいんだよ、お兄さん」
「ッ!く、クロムさん、私先に武器屋さんへ行ってますから!!!」
「おい、ルフレ?」
からかわれているのか、真面目に買わせようとしているのか。ニヤニヤとしている細工師と、全く理解していないで見当違いな心配をしてくるクロムに対してこれ以上墓穴を掘りたくなくて、ルフレはその場から飛び出していった。
(ああもう、恥ずかしい!!そういうのじゃないのに!!!)
走りながらフードを被り、ルフレは茹で蛸のように赤くなった頬を人目から隠そうとした。
だけど目の奥にはあの夜空のような美しい青さと、クロムの顔が離れない。
あの細工師の目には最初、恋人同士に見えていたのだろうか。
それが少しだけ嬉しくて、でも相変わらず鈍い彼に腹を立てている自分がいた。
そして素直になれない自分にも。
(もっと素直になれればいいのに)
ふと脳裏におっとりとした天馬騎士がよぎり、ルフレは荒くなった呼気を吐いて落ち込んだ。
彼女のクロムに対する感情が恋愛によるものかは分からないが、慕っていることを隠さずにこちらが恥ずかしくなるほどのまっすぐな好意を向けている。自分も想いに素直になって、胸を張ってあのペンダントを買えたならば
(……でも、それ以前の問題なんですよね。やっぱり女として見られていないっていうのは)
悪気なく言い放ったクロムの言葉を思い出し、深い深い溜息をついた。
初めて言われた時は本当に彼のことをなんとも思っていなかったのだが、不器用ながらも姉の理想についていこうと剣を振るう彼の傍にいるうちに友人という境界はあっさりと壊されて、もっと近づきたいという気持ちが湧き上がってきた。そして、彼と談笑している女性達を見ていると苛立ちに変わり、笑顔を向けられるとどうしようもなく鼓動が跳ね上がる。
だからこそ、悔しい。お守りにすら素直に頼れないで、このまま友人関係でもいいと逃げ続けている自分自身が。
トボトボと歩き、武器屋の前にたどり着く。帰る頃まで、あの店はやっているだろうか。もう一度覗いてみようと肩を落としていると「ルフレ!」と声が聞こえた。民衆の中から藍色髪を一目で見つけ出し、ホッとしている自分も相当重症だと自嘲めいた笑みを浮かべる。
「急に駆け出すからどうしたのかと思った。迷子になるぞ?」
相変わらずこちらの気持ちを微塵も気づいていなさそうに心配してくるクロムに、ルフレは「ごめんなさい」と素直に謝る。
ある意味、彼のそういう鈍感さや抜けているに惹かれているところもあるのだから。
「顔、さっきから赤いぞ。大丈夫か?」
「なんでもないでーす……さ、買い出しを始めましょう。遅くに帰ったら余計にフレデリクさんに怒られてしまいますよ?」
不思議そうな顔をしたクロムを促し、ルフレは武器屋の扉を開ける。思ったよりも扉が重厚だったが、クロムが手を添えて開くのを手伝ってくれた。
今はいつペレジアと戦争が勃発してしまうかわからないという緊迫した状況、軍師と拾われた以上あまり浮かれている訳にもいかない。
それでも今日一日は、偶然とはいえ彼を独占できている。
自分でもどうしていいかわからずもどかしい想いをしたり、悔しかったりもするが。その幸せが、ルフレの心を占めていた。
***
「これで全部か?」
「ええ、そうみたいです。すみません、大分荷物を持たせてしまって……」
「そういう約束でついてきたんだ。当然だろ?」
戦術書や武器、薬等を軽々と持ち上げ笑うクロムにルフレもまた微笑み返す。
二人いるからとついつい買いすぎてしまったが、嫌な顔一つせずに荷物持ちに徹してくれる彼の優しさに感心した。彼ら兄弟は王族でありながら特別扱いを嫌い、身近にいてくれる。第一に守られるべき存在が果たしてそれでいいものか、と首を傾げたこともあったが、その気さくさがあるからこそ彼等を慕う者たちも多いのだと気づかされたのだ。
そして身分等忘れてしまう程傍にいてくれるからこそ、想いはどんどん膨らんでいく。
例え叶わなくとも。異性として見られていなくとも。一瞬でもこの人の傍にいれるならば。
「ふふ、今日は有難うございます。さ、帰りましょうか?」
「そうだな……ああそうだルフレ、その前に」
クロムはゴソゴソと懐を漁り、何かを取り出してきた。日の光が赤味を含んでくる世界で、藍色が揺れ光る。あっ、とルフレが声を上げると彼ははにかんだ笑みを浮かべてそれを差し出してきた。
「お前にこれを。ええと、前からルフレには世話になっていたから何か形にしたかったんだが、どうにも思いつかなくてな……最初は本でも贈ろうと思って書店を見てみたりしたが、俺にはどれがよいかさっぱりだしリズには女に贈るものではないと叱られた。だから、こういうものに興味を持っていて安心したんだ」
先程露天で見かけたペンダントが夕日に照らされ静かに輝いた。いつのまに、そう無意識に呟くと「いや、お前が駆け出した時にチャンスだと思って咄嗟に買ってた」と照れくさそうに彼が言う。
「そんな……高かったでしょう?受け取れません。第一、最初に助けられたのは私ですし」
「いや、お前は俺だけの為じゃない。皆の為によく働いてくれているだろう?お前が来てくれてから、自警団での怪我人が格段に減ったし武器の消耗も最小限になった。姉さんもお前を信頼している……本当に有難う、だから受け取ってくれないか」
俺からの感謝の気持ちだ、そう言ってクロムは半ば強引にルフレの首へ革紐を通されたペンダントをかける。
青い石が胸に当たりコツンと跳ね、ストンと収まった。まるでそこが納まるべき場所だったかのように。
「似合っている」
そう言ってクロムは満足そうに笑って、ルフレの頭をクシャリと撫でた。
彼の柔らかい笑みを見て、頬に血が昇った。しかし不思議と恥ずかしさは消えている。
正体不明の記憶喪失。そんなルフレを保護し、軍師として拾ってきてくれた人。真っ白だったルフレにインクを零すかのように、仲間や絆というものを教えてくれた。
感謝するのはこちらの方なのに、彼は以前からこうして気遣ってくれていたのだ。そのことが嬉しくて、ルフレは彼の髪色を映したかのようなペンダントをギュッと握り締める。
彼には与えられてばかりで、それでも足りなくて拗ねていた心が嘘のように舞い上がっていた。
傍にいたい。クロムにもっと認められ、助けになって。もっと近くで、一瞬でも長い時を。
例え、それがどんな形であろうとも。
「有難うございます。私、大事にしますね」
この胸にこみ上げて来た、負の感情よりも大きく温かいもの。それをいつものように隠さずに笑んでみると、クロムは少し驚いた顔をして、すぐに微笑み返してくれた。今まで見てきた中で、一番の柔らかな笑みだった。
「これからもよろしくお願いしますね、クロムさん」
「ああ、こちらこそ。なんだか、改めて言い直すと恥ずかしいものがあるな」
「……あら、クロムさんってそういうこと恥ずかしげなく言ってのける人だと思ってました」
「う、うるさい」
馬に荷物を載せながらからかってみると、クロムは少しだけむすっとした声で返してきた。彼の横顔が少しだけ赤く見えたのは夕焼けのせいだろうか。ルフレは大事にしようと胸元へペンダントを入れる。お守り石が肌のより近くで感じられ、くすぐったくなり彼に気づかれぬようこっそりと笑んだ。
「頂き物は嬉しいですけど、フレデリクさんからは庇いませんからね?」
「うぐっ、嫌なことを思い出させるなよ」
「一応、ゴマすり用にフレデリクさんの好物はお土産で買ってきたのですけど。あの人、公私は分けそうですから難しいかもしれません」
「……良くて説教3時間コースだろうな。だがお前とこうして息抜きできたから良かったかもしれない」
「それ、怒られた後でも同じこと言えますかね……でも、私も楽しかったです」
「だって、デートみたいだったから」とうっかり言ってしまいそうな口をつぐむ。
今は、まだ。
そうこうしているうちに鞭を入れられた馬がいなないた。
行きとは変わってクロムが手綱を引き、二人相乗りして帰路を急ぐ。茜色に染まっていた空は青みを増して行き、やがてこのペンダントのような満点の夜空になるのだろう。
記憶を失ってから初めて見た、あの人と同じ大好きな藍色の世界に。
ルフレは胸元に手を当てる。何度か硬質な感触を確認し、幸福感に浸りながら彼の広い背中を見つめていた。
「よし!俺は覚悟を決めた、これ以上遅くならないためにも急ごう。しっかり捕まってろ」
「はい、クロムさん!」
(何があってもこの背中を守ろう)
一番星が輝きたした道中を馬が勢いよく駆け出していく。
ペンダントにそっと祈りを込めたのを、前一点を見据えているだろう彼は知らない。
***
水面に輝く星が映る泉のほとり。
夜とはいえ暑さが残る時期だ。ルフレは水浴びをしようと愛娘を誘い、埃っぽくなっていたコートを脱いでいると、同じく薄着になった彼女の胸元で青く輝く物が目に入った。
「ルキナ、それは」
「これですか?」
金のカチューシャを外し、長く艶のある髪を纏めていたルキナが胸に手を当てる。鎖に通されたペンダントが月の光に照らされキラリと輝いた。
「これは、本当のお母様の形見なんです。子供の頃お母様が遠征する前に幸福のお守りとして頂いて、それきり……。この前うっかりと落としてしまったから、今度は肌身欠かさず身に付けようと鎖に通したのです」
愛しげに、そして何処か悲しげに。自身の髪色に似た、深い群青色の石が嵌っているそれを撫でる娘にルフレは思わず言葉を失った。しかしすぐに笑顔を浮かべ、自らの胸元を漁る。
「やっぱり。何処か見覚えがあると思ったら」
「?……あ!!」
あの日以来お守り替わりにしていたペンダントを掲げて見せると、ルキナは目を見開く。
そのペンダントは彼女が持っていた物と、寸部変わらぬ物だった。空の頂点をそのまま結晶化させたような青い石に、金の点が星のように入っている。
王族の娘が持つにしては少々華美さが足りないデザインの物を、ルキナは形見として大事に持っていてくれた。そのことが嬉しくて、ルフレは顔を綻ばせる。
「流石ルキナですね。これ、クロムさんから貰ったものなんですよ」
「お父様が?」
「ええ、そうですよ。まだ貴方が生まれる前……いえ、恋人にすらなってない頃に」
「その話、是非聞かせて頂けませんか?!」
石と似た色の目を輝かせ、ルキナが詰め寄ってきた。普段は気を張っているがやはり彼女も年頃の少女、特に敬愛する父にまつわる恋の話は聞いておきたいのだろう。
二つのペンダントが跳ねた。未来の自分は愛する子供達を置いて亡くなってしまったのだろうが、想いは託された。時を経ても色褪せぬこの石は、彼女の傍で見守っていてくれたのだ。
「ええ、勿論。このまま立ち話も何ですし、水浴びしながらでもどうですか?」
「はい、お母様!」
いそいそと服を脱ぎ出す娘が可愛らしく、ルフレも彼女を待たせてはいけないとキャミソールに手をかける。青色の石が胸にコツンとぶつかり、まだそんなに遠くないはずのあの日のことを思い返させ、一人でクスリと笑った。
ペンダントの石はラピスラズリです。「己の中や周囲の邪念を払い、正しき道を示す」というのがルフレさんにぴったりかなと。
ダークナイト姿を見て髪まとめたルキナ書きたい→ルキナのペンダントに関する話が書きたい→どうしてこうなった。
クロムさんは裸を見てから性差を意識する人だと思うので、この時点ではルフレさんに恋愛感情は抱いていないです。最初から好きだったと言ってた?そいつは罠だ。
一応11章までのクロルフはまだ結婚してないということでちょっと幼さを意識して書いています。