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FE覚醒の小説や絵、妄想をたれながしています。
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桜霞の続きで、ただ夫婦がいちゃついているだけのR18小説です。




風に乗って花弁が舞い込み、白い湯気をあげる温泉へと落ちていく。
湯ごとそれをすくい上げ、ゆらゆらと揺れる薄桃を観察しながらルフレは一人呟いた。

「はあ、温泉も今日でおしまいなのですね」

式典と視察という名の観光も終え、ルフレ達は明日には帰路につくこととなっている。祖国イーリスも勿論好きなのではあるが、これからの長旅を考えるとやはり気が重い。何より、ソンシン名物である温泉に入れなくなると考えると、少し寂しく感じてしまうのだ。
異界の紅葉に囲まれた温泉も良かったが、満開の桜を眺めることができるソンシン迎賓宿の露天風呂も異国情緒に溢れていて、思わず溜息をついてしまう程美しかった。
昨日までは子供達と未来から来たルキナと共に入っていたのだが、「お母様もたまにはゆっくりしてください」と気遣われ、個人用の一回り小さな温泉にこうして浸かっている。賑やかな風呂も楽しいのだが、小さなマークが大浴場でふざけて泳ぎだすのを止めるのに大変だったのだ。ルキナの心遣いが有難い、と足を伸ばしながらルフレは温泉を堪能する。

(イーリスにも温泉が出ればいいのに、なんて)

書物を読み漁る癖がある故目の疲れや肩こりが人一倍多いと自覚しているから、全身の凝りを解す効果があるというこのお湯が尚更名残惜しく感じてしまう。これだけ潤沢にお湯を使えるのは贅沢なことだ、としみじみと感じ、せめて今夜は存分に楽しもうと花びらが浮かぶ湯の中へと更に深く浸かった。その時、こんこんと流れるお湯のせせらぎしか聞こえなかった風呂場にガラリと大きな音が響く。

――誰だろう、もしかして小さなルキナとマークが探しに来たのだろうか?

疑問に思い振り返ると、湯気の先に見えた大きな人影に言葉を失う。

「……」
「……えっと、なんだ、その」

そこには辛うじて腰にタオルを巻きつけているものの、ほぼ全裸に等しいクロムが居心地が悪そうに立っていた。
思いがけない人物の登場に、ルフレは言葉が出ずしばらくただ目を瞬かせていた。しかし自分が一糸纏わぬ姿でいることに気づき、思わず胸を片手で抑え仰け反る。

「ま、待て!誤解だルフレ!!」
「きゃあああ!」

次の瞬間スコーン、と小気味のいい音が風呂場に響き渡った。



「……夫に対してこの仕打ちはないだろう」
「ご、ごめんなさい…反射的に、つい」

憮然とした顔のクロムの広い背中を流しながら、ルフレは平謝りしていた。
咄嗟に投げた風呂桶は見事に額へ命中し、鏡に映っている僅かに赤くなったそこを見て申し訳なさで一杯になる。
まだ付き合ってもいない、むしろクロムを異性とさえ意識したことがなかった頃。さっきとは逆にルフレがうっかりと彼が水浴びしている時に天幕内へと入ってしまった事が有り、思わず手近にあるものを投げつけたことを思い出しうな垂れた。あれも自分の確認不足だった、と苦々しい顔をしていると、「裸なんてもう見慣れているだろうに」と鏡越しにクロムが笑ってみせた。

「そう気に病むな。昔のことを思い出して楽しかったよ……あの時も、俺がうっかり天幕に入ったり入られたりしたな、懐かしい」
「あの時のことは悪かったですってば」
「ハハハ、しかしあいつらには一杯食わされた」
「ええ、まさかルキナ達が共謀していたなんて」

クロムの話を聞けば、「父さんもたまには一人でゆっくりしたいでしょ?僕がフレデリクさんになんとか言っておきますから、父さんはこちらに!」と半ば強引に連れてこられたという。
ルキナが以前混浴に興味を示していたが、まさか行動に移されるとは。それも二人きりで。
泡立った背中をお湯で洗い流し、「もういいですよ」と仕上げに濡れていつもより艶やかに輝く藍髪を梳いた。

「だが、お前と二人きりでゆっくりする機会も最近なかったから丁度良かった」
「そうですね、明日からまた船旅ですし。折角だから夫婦でゆっくりしましょう」

水を滴らせた夫に手を差し伸べられ、首筋を優しく撫でられルフレはくすぐったさに笑う。
「お前の背中も流そうか?」と小首を傾げてくる夫にもう自分で洗ったから、と顔を赤くして首を振れば、少しだけ残念そうな顔をされた。


*


「またやられたな」
「ええ、やられましたね……」

温泉から上がり、二人仲良く部屋の前まで戻ってきた時。子供達の声で賑やかだと思っていた大部屋は静まり返っており、不思議に思って襖を開けばそこはもぬけの空だった。

「『父さん、母さんへ。貴方達の可愛い子供は僕たちが預かりました。明日の朝無事に返しますから今晩は覚悟してください by Wマルス』……もう、あの子達ったらいつからこんなにませていたんですか!」

机の上に置かれた手紙を読み上げ、ルフレは頬を赤らめて額に手を当てた。
前もってこのことを計画し、サイリにも話を通したのだろう。普段は諌める側であるルキナも、両親の仲を深める為ならばとマークの案に追従したに違いない。冷静で真面目な姉だが、以前紐のような下着を危うく渡されそうになったことがあるのだ。ご丁寧にぴったりと二つ寄せられている布団を見て、彼らの本気を悟り溜息をついてしまう。

「流石は軍師の子とでもいうべきなのか、これは」
「うう、ここまで準備万端だと逆になんだか恥ずかしいですよ、私」

あの二人は夫婦間の夜の営みについてどこまで知っているのか……考えただけで、恥ずかしさで目眩がしてくる。これには流石のクロムも羞恥心を感じたらしく、「あいつら…」と呟き頬をかいていた。

「まあ、あいつらなりに考えてやってくれたことだろう。マークはともかく、ルキナは無理に連れてきてしまったからな」
「そうですね……恥ずかしいですけど、この厚意は有り難く受け取っておきましょうか」

この世界の自分自身、そして両親に配慮してか同行を渋っていたルキナを、護衛として半ば強引に誘ったのはルフレ達だ。気を使わせてしまっていたら申し訳なく思い、イーリスに戻ったら子供達の相手までしてくれた彼らにちゃんと感謝しなければ、と改めて考える。
ともかく子供たちの厚意を無駄にする訳にもいかない。

「と、取り敢えずお茶でも飲みましょうか?」
「そうだな、そうしよう」

いつもよりぎこちなく微笑めば、クロムも同じように照笑いを浮かべた。



ソンシン特有の紙が貼られた、柔らかな光を放つ照明に照らされて暗い室内がなんとも言えないムードを生み出している。
昨夜まではなんとも思っていなかったのに、こうして夫婦向かい合って見てみると異国の照明効果も相まってか、相手がいつもよりしっとりと艶やかに見えてしまう。眠たいのか、珍しくぼんやりとしているクロムの見慣れているはずの横顔を、ルフレは不思議な気持ちで眺めていた。
じっと見つめていたことに気づいたのか、青い瞳がこちらの姿を捉えてくる。気恥かしさを感じて思わず布団を被れば、「なんだよ」とむっとした声をかけられた。

「べ、別になんでもないです……」
「そうは見えないが」

指摘されると余計に羞恥心が増して、クロムの視線から逃れようと身を転がそうとするも逞しい腕に掴まれて阻まれてしまう。
見とれていたなんていえるわけない、と上目遣いで訴えかける。クロムはそんなルフレの様子に口角を上げると、腕を引き寄せて抱きしめてきた。

「いつもよりお前、温かいな」
「温泉のお陰で血行よくなったからでしょうか?ソンシンに来てから、肌の調子もいつもよりいいんです」
「ん、本当だ。すべすべしている」
「ってクロムさん、どさくさに紛れてどこ触っているんですか」

浴衣の隙間からごく自然に入ってきた手を、ルフレはピシャリと叩いた。妻のつれない態度にクロムは少しだけ渋い顔をしたものの、めげずにもう片方の手で触ろうとしてくる。

「しないのか?」

濡れた瞳で見つめてくるクロムに心臓の鼓動が跳ね上がった。悟られぬように目を逸らすも、再び潜り込んで来た手に胸を触られ、早まっていく鼓動に気づかれてしまう。

「ここでしたら、あの子達の思う壺みたいじゃないですか……」
「俺はお前の意志を聞いているんだ」
「う……」
「ちなみに俺はしたい」
「わ、わざわざ言わなくていいです!」

異界でサイリから一通り習ったものの、やはり着慣れていないためか。浴衣の帯はあっさり緩んでしまい、布団の中で揉み合っていた為に互いに素肌を晒し合っている。はだけた浴衣から覗いていた、むき出しになった太腿を撫でられて肌が粟立った。
ここに来てから子供たちもいる手前、クロムと肌を重ねていない。油をたっぷり染み込ませた芯に火が付けられたかのように、ルフレの身体はどうしようもなく熱くなって物欲しくなってしまうのだ。
クロムもそれをわかっているのか、掌全体を使って背筋を優しく撫でてくる。最初にした時に比べものにならないくらいに優しくなっている手つきに甘さを含んだ息を吐き、ルフレはコクリと頷いた。

「したい、です」

その言葉を合図に、全身を撫で上げていたクロムの手がすっかりとたるんだ帯へと伸びていく。
彼の瞳の奥に、獣じみた情欲を見つけて生唾を飲む。そして早く欲しいと言わんばかりに、ルフレもまた彼の帯へと手をかけた。


「む、んぐ……」

口を押し広げ、質量を増していくクロムの味に眉を顰める。それでも舌を止めないのは、ルフレが与える刺激に反応するもう一つの彼が、愛しくて仕方ないからなのだろうか。
しかし時折動きが止まってしまうのは、ルフレの下半身もまた彼によって愛撫されている為である。夫とはいえ、一国の王に奉仕されているという事実に言いようもない背徳感を覚え、自らが発している水音も相まってより感覚が高ぶっていくのだ。

「口、止まっているぞ」
「ぁ、だれの、せい、ですか……!」

身体のうちからゾワゾワと這い上がってくる快感に必死で耐えながら、先に達してしまわぬよう半ば意地になってクロムのものに舌を這わしていく。すました声で言っているが、彼もまた余裕がないことを知っているのだ。ツルツルとした先端を口に含み、音を立て口内へと埋めていけば彼が腹筋を引きつらせ、少しだけ動きを止めたのを感じた。

「おはえひ、れふ」

口に含んだまま、得意げに言って見せる。その言葉に煽られたのか、はたまた声の振動で感じたのか。一際大きくなったクロムをずるりと口から離すと、胴を抱えられそのまま組み敷かれた。

「言ったな、今夜は覚悟しろよ」
「ふふ、受けて立ちます。……いえ、やっぱり少しはいたわってください、帰れなくなっちゃいます」
「それはお前次第だ」

不敵に口元を歪めるクロムに嫌な予感がして、思わずルフレは逃げようとするも、のしかかられてしまい身動きできない。 
汗ばんでいた太腿を掴まれ、大きく広げられた。愛液と彼の唾液で濡れたそこはしっとりと濡れており、もう受け入れる準備は万端である。
帯を取られ、衣装として意味をなしていなかった浴衣をクロムは脱ぎ捨てた。
柔らかい光に照らされ、二人の男女は見つめ合う。まだ乾ききっていない髪が首筋に触れ、ごく自然に唇が触れ合った。それと同時に熱いものが入口に当てられ、ゆっくりと侵入を開始する。

「ん……」

幾度と抱かれ、彼の形だけをしっかりと刻み込まれたそこは、淫靡な水音を立てて受け入れていった。舌も激しく絡み合い、飲みきれなくなり混ざり合った唾液が喘ごうとする度に零れおちて行く。
気を抜けばあっという間に真っ白に染まってしまいそうな思考を繋ぎ止めようと、必死で彼の首に手を回す。愛しい人と上も下も結ばれる快感は、何度行為を重ねようと薄れることがないのだと蕩けた意識の中でルフレは思った。
そして同時に、自分がいなくなっていた2年の間彼はどうしていたのだろうと疑問が湧いてくる。
ルフレがいない時クロムはどんなものを見て、どんなことを考えて、どんな思いで夜を過ごしていたのだろうか。
桜霞の中で見せた彼の表情を思い出す。きっと日中子供達を見失った時よりも、もっともっと不安で仕方なかったのだろう。長い時を生きる神竜ですら、戻ってくるという保証は出来なかったのだから。
半身だけど、その胸中の全てを知ることはできない。その時感じた絶望は今も彼の心にこびり付いて、永遠に離れることはないのだろう。それはルフレが思うよりもずっと深く、消えない傷として愛しい人を苛んでいるのだ。

――この選択を後悔していない。でも、もし逆の立場だったら。

押し入り、引き抜かれていく彼に翻弄される中、ルフレは彼にしがみつきながら考えた。
きっと世界は太陽を失ったように暗くなってしまうのだろう。心は冷たい土のように固まり、春が来たとしても、花の色も生命の息吹も感じられない程に。きっとクロムを殺した未来の自分も、その絶望と相まって邪竜と化してしまったのだ。
長い間触れ合っていた舌が引き抜かれ、こらえきれなくなった喘ぎ声が漏れ出す。より深くを穿たれ、狭まっていく器にクロムは睫毛を伏せ強くルフレを抱いた。
痛いとさえ思うほど、彼は強く抱きしめてくる。大切な人を失っても、王として人の上に立たなければならない意志と衝動の間で揺れ動かされる苦悩。それが彼を時折獣じみさせるのだ。

「くろ、むさ、」
「どうした?」

揺さぶられる視界の中で彼の名を紡げば、汗を流しながら応えてくれる。
王としてではなく、一人の男として見つめてくる夫の頬にそっと触れた。痣が消えた掌で。

「わたし、そばに、います、から」

クロムの傷に寄り添って生きたい。もう傷つけることがないよう、はぐれることがないよう。
どうしても別れなければいけない場面が訪れればまた同じ選択をするだろうけども。その時は
例え再び身体は離れたとしても、この魂は傍にいよう。彼がもう闇の澱みの中で、震えることがないように。
それまで無心に快楽を求めていたクロムが、子供のような顔をした。その目尻に浮かんだ涙は、生理的なものなのか、それとも心の痛みからなのか。震える指でそれを拭い去る。指を伝う熱い水滴が、彼に深く穿たれることで散っていく。

「ぁ、ひゃん!」
「あたり、まえだろッ……」

腰を掴まれ、今まで以上に激しく抽挿される。いつもより低い声で、余裕なく呟かれた言葉にゾクゾクと背筋が震え、ひっきりなしに甘い声を上げた。

「おまえが、世界が、なんといおうと……たとえ、愚王といわれようとも、おれは、もう」
「クロム、さ、ぁあッ」
「はなさない、ぜったいに」

ルフレの中のクロムが膨れ上がる。最も感じる所を何度も掠められ、彼に組み敷かれている足がピンと伸び魚のように跳ねた。
世界が薄桃の花びらで埋め尽くされるかのように、あっという間に何も考えられなくなる。制御が効かなくなった身体は彼を強く締め付けた。同時にクロムも達したようで、蠢く胎内に熱いものが静かに広がっていく感触を敏感になったルフレは感じ取った。


*


「見事なものだな」
「ええ、本当に……」

ショウジという紙を張った窓を開けば、月に照らされ靄のような桜が見えた。
熱く湿っぽくなった空気を換気しようと開けたのだが、予想以上に美しい光景にルフレもまたクロムの肩にもたれかかりながら眺めていた。昼の桜も美しかったが、夜の幻想めいた光景も美しい。しかしこの花ももう数日で散ってしまうという。サイリに説かれたショギョウムジョウという言葉の意味はこういうことなのか、と快楽の霞が残る頭でぼんやりと考えた。

「また、来れるといいですね」
「来れるさ。あいつらも連れて、今度はリズ達も誘ってみるか」
「みんなでお花見、ですか?ふふ、楽しそう」
「お前のまずい飯も持って、な」
「……クロムさんに言われたくないです。それに最近はちょっぴり鋼の味がするだけですから」

頬を膨らませてすっかりとぐしゃぐしゃになってしまった浴衣を引っ張れば、笑って肩を抱き寄せられた。ルフレも微笑んで彼にくったりとした背を預ける。

「今まで離れていた分、ゆっくりと取り戻させて貰うからな?」
「それは一生かかりそうですね」
「無論そのつもりだ」
「まあ、それは覚悟しないと」

窓から風に乗って、何処からともなくひらひらと花弁が迷い込んでくる。何気なしに掴み取ろうと手を伸ばし、その掌ごとクロムに包み込まれた。
手の中に納まる桜の花弁を見て、二人して笑いあう。クロムの顔は和やかで、こみ上げてきた愛しさからルフレは彼の頬にそっとキスをした。花が掠めるように、そっと。






本当は温泉エロスを書きたかったのですが、流石に他人様の家のお風呂(初期設定ではソンシン城でした)でやるのはルフレさんらしくないかな、と思いましたので普通に部屋でしっぽりと致しています。
ギャグベースで書くつもりだったので、ルキナの手によって物凄い下着が枕の下に置いてあったとか卓球して遊んでいたり枕投げしていたりする子供達という小ネタもばっさりカット。(そもそも異界じゃないから卓球はないはずだ)
親が致している場面を想像するのは子供にとって嫌なはずなのでしょうが、この姉弟は若い両親にテンションが上がっているのでしょう。…苦しい言い訳ですね。
オフ本も通して言えることなのですが、クロルフにとって周りが都合良く動き過ぎる展開が多くて自分でうーんとなっております。ただの舞台装置と化しているというか。自分でもなんとかしたい点ではあります。サイリとの会話も入れたかったなぁ…幼い頃のレンハとサイリを見てみたいです。
余談ですが、桜霞と共にこの話はオフ本の後日談という裏設定があります。
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