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バレンタイン小説クロルフ編です。
※注意※
・やっぱりルキナがおかしいです。そしてクロルフというよりルフレ+ルキナ話に。
・ややギャグテイストが強めになっております。キャラ崩壊が苦手な方は閲覧の際ご注意ください。
それでも宜しければつづきからどうぞ!
※注意※
・やっぱりルキナがおかしいです。そしてクロルフというよりルフレ+ルキナ話に。
・ややギャグテイストが強めになっております。キャラ崩壊が苦手な方は閲覧の際ご注意ください。
それでも宜しければつづきからどうぞ!
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「さあ、よってらっしゃい見てらっしゃい!意中の相手がいる人も、もう相手をゲットしている人でも!狙った相手のハートをぎゅっと掴んで離さない手作り菓子キット一式・ラッピングまで揃っているわよー!あなたが女の子なら絶対お買い得、今なら意中の彼を骨抜きにしちゃう伝説のマジカルレシピ集もサービスしちゃうわ!」
トレードマークである赤髪のポニーテールを振り回し、商人らしくよく通る声で張り上げられたアンナの声が陣内に響き渡る。普段は戦いの中に身を置きキリリとした表情を見せている女性兵士達が、皆必死な顔で商品を物色し群がっていた。
想い人がいるらしく、どこか神に縋るような顔で品物を選んでいる年頃の少女から、そんなものに頼らなくとも十分熱々だと思われる夫持ちの仲間も輪の中にいるのを見てルフレには苦笑いすることしか出来なかった。
――今日は2の月13の日、バレンタインの前日。かつてアカネイアでの歴史の中で兵士の恋愛を禁止した王がおり、ある一人の僧侶が死地に赴く彼らを哀れみ秘密裏のうちに愛を誓わせたという。彼は処刑されたがその日は祭日として残り、今では恋人たちの日として各国で過ごされている。
男女問わず贈り物をし親愛を伝え合う日となっているはずなのだが、アンナは愛の日ということに目をつけ、普段素直に想いを伝えられない女性達を標的に商売をしたらしい。物資が不足しがちな軍内では甘いものなど贅沢品のはずだが、愛する者に情を伝えようと必死な彼女達は財布の紐が緩い。ましてや街まで距離がある場所に陣を構えているからなおさら盛況しているのだろう。どこで仕入れていたのか相変わらず不思議だが。
「もう、皆さん気持ちはわかりますけどアンナ商会に乗せられ過ぎです…」
「お母様!」
懐が潤っているだろうアンナを少し叱ってやろうかと読んでいた本を閉じた時、明るく弾んだ声が背後から聞こえた。
見ればどこかそわそわした顔のルキナが、沢山の荷物を持ってルフレを覗き込んでいる。もしルキナに尻尾があったら振りちぎらんばかりに振っているのではないか、という様相だ。
「ルキナ、どうしたんですか?その荷物は」
「私もアンナさんから買っちゃいました。賑わっているからと見てみたら、どれもこれも未来では手に入らないもので、欲しくなってしまって!懐は寂しくなってしまったのですがいいお買い物ができました」
目を輝かせて色とりどりの包装紙や材料らしきものが詰め込まれた麻袋を見せてくる娘が可愛らしく、滅多に見せない子供っぽい表情にルフレは微笑ましさ半分、複雑さ半分といった笑みを彼女に向けた。まさかしっかりとした性格だと思っていたルキナまでがこの空気に飲まれるとは思わなかったのだ。
あまり無駄遣いする子ではないことを知っているが、少ない小遣いを他人のためにつぎ込むなんて、とその健気さに涙さえ出そうになってしまう。いくら貴重だからと純粋な少女たちの想いを利用し、暴利をつけて売りさばくアンナに文句を言ってやらなければ気が済まないと心に誓った。
「お母様、どうしたのですか?目頭を押さえて」
「…なんでもないですよ。これから作るのですか?頑張ってくださいね、できたら私にも少しだけ分けてくださいな」
「うふふ、折角白いお砂糖も手に入ったのですから腕によりをかけますね。あの、お母様も明日はお父様に何か渡されるのですか?」
空のように澄んでいる瞳が何かを伺うようにこちらを見つめてくる。何かを期待しているかのような娘の眼差しに首を傾げながら、「ええ、用意してありますよ」とルフレは答えた。
「クロムさん用の菓子はこの前の買い出し時にばっちり買ってあります。ガイアさんが教えてくれた知る人ぞ知る名店らしいですよ。ルキナとマークの分もちゃんと用意してありますから皆で食べましょうね」
愛する夫の為だ、菓子にうるさいガイアが選ぶ高級菓子店だからきっと喜んでくれるに違いないと口元を綻ばせるルフレの反面、ルキナはその答えに少しだけ不服な顔をしてみせた。
「…その、手作りとかはされないのですか?」
「え?いえ、そんな予定はないですけれど」
「今までもお店のものをあげていたのですか?」
「勿論、毎年お店は変えて、クロムさんの好みから選んでみてはいるのですが…えっとルキナ?どうしたんですかそんな怖い顔をして」
急に何かを思案するよううつむく娘に違和感を覚える。何か変なことでも言っただろうかと思い返そうとしたとき、「いけません!」と彼女は切なげに叫んだ。
「お母様、今から一緒に菓子を作りましょう!」
「随分と唐突ですねルキナ…また何か変なことでも吹き込まれたのですか?」
「セレナから借りた本に書いてありました、愛する者がいるという女性は念を篭めた手作り菓子を送り、真実の愛をぶつけると!そうすれば異性はメロメロになると!」
「…たぶん貴方が借りたというその本は、思春期の少女を想定している偏向した内容が書かれた恋愛参考書だと思うので、夫婦間には適応されないと思いますが」
拳を握り熱く語るルキナの純粋さにルフレは思わず顔を覆った。真っ直ぐに育ってくれたのはとても嬉しいが、人を疑わず偏った意見をも信じてしまう傾向があるのはクロムに似てしまったのかとため息をついてしまう。
「私の料理の腕を知っているでしょう?ましてや菓子なんて私にはムリです、鋼の味になる未来しか見えません」
「そんな、お母様…!お母様の想いが込められていれば、お父様も一撃でノックアウト出来ます!」
「ルキナ、私の場合はノックアウトの意味合いが変わってしまうと思うので…」
ルフレは料理が苦手だ。一応人間が食べられるものを作れるし栄養面を含めてレシピを考えたり仕込みに工夫を凝らしたりと料理行程自体は好きなのだが、いかんせん味が悪いことが多い。初めてクロムに手料理をふるまった時に「鋼の味がする…」と苦々しげな顔で言われて以来、必要に迫られた時以外は作らないようにしている。両親に似ず料理が出来るとルキナが言った時は味覚が正常に育ってくれたのか、と未来の自分に感謝したものだった。
「貴方の気持ちはとても嬉しいですが、私とクロムさんの間ではこれが普通ですから大丈夫ですよ。折角の貴重な食材が可哀想ですし、貴方のお金で買ったものです。ルキナが心を籠めて作った美味しい菓子の方が、クロムさんも喜びますよ」
「お母様…」
娘を諭すように言えば、聞き分けの良い彼女ならば諦めてくれると思った。しかしルキナは材料の入った麻袋を抱きしめ何かをこらえるようにじっとこちらを見つめてくる。
「ルキナ?」
「…いえ、違うんですお母様。お父様とお母様の絆はこんなことをしなくても深く結ばれていることはわかっているんです。本当は、私…」
縋るようにこちらを見つめてくるルキナにルフレは息を呑み彼女の真意を悟る。
彼女はただ、母親と一緒に菓子作りをしたかっただけなのではないか。
未来の自分がどういう風にわが子へ接していたかはわからないが、あまり積極的に台所へ入らなかったのではないだろうかと推測する。仕事にかまけ、あまり親子の時間を持てなかったのかもしれない。料理が好きだというルキナは、無意識のうちに母と料理をしてみたいという欲求が生まれていたのではないだろうか。
思えば嬉しそうに買ってきたものを見せてくれたのも、一緒に作りたいという気持ちがあったからに違いない。素直に親へ甘えられなかっただろう娘の健気さ、自分の気遣いの裏腹さにルフレは唇を噛み、少しだけ泣きそうな顔をしているルキナをそっと抱きしめた。彼女はただ、幼い頃に亡くした母親と共に過ごす切欠が欲しかっただけなのだ。
「我が儘な子でごめんなさい、お母様。呆れてしまいましたか?」
「いいえ、私こそ自分のことばっかりでごめんなさい。…ねえルキナ、私に作り方を教えてくださいませんか?実はお菓子作りなんて、ほどんどやったことがないんです」
クロム譲りの藍髪を撫で娘への愛しさから微笑んでみせれば、ルキナは顔をぱっと明るくさせ、「はい!」と元気よく返事をしてくれた。
*
「というわけでクロムさん、覚悟してください」
「覚悟ってなんだ」
2の月の14の日。天幕の中にいるはずなのに何処からともなく漂う甘い香りにクロムが鼻をひくひくとさせていると、何故か疲れきった顔をしたルフレがぬらり、と幽鬼の如く現れた。香りに似つかわしくない威圧感を放つ彼女にクロムは思わず後ずさりをしてしまう。
そういえば昨日は彼女に会えていなかった。一日に一度は顔を合わせたいと思い彼女の天幕に向かうも「今、母さんはルキナさんと共に巨大な壁へと立ち向かっているんです!ここは男子禁制の修練所なんですよ!」と息子であるマークによくわからない理由で追い返されてしまったのだ。そんな大層なことをいう割に、彼は楽しそうな顔をしていたのだが。
「大丈夫、怖がらないで私の目を見て。ちゃーんと口直しの高級菓子も用意してありますから大丈夫ですよ」
「なんでいきなりスミアみたいな口調になっているんだ…昨日姿を見せないと思ったんだがどうしたんだ?なにか覚えたいスキルでもあったのか?」
「女には女なりの意地と戦いがあるんです…」
話が見えず呆れるクロムに対し、ルフレは何処か遠い目をしてため息をついた。目の下にはくっきりと隈が刻まれており、また徹夜でもしてお気に入りの戦術書を読んでいたのかと肩を竦めた。
「なんだかよくわからないが、取り敢えず身体を休めろ。お前が倒れたら心配するだろ」
「ごめんなさい、貴方にこれを渡したら今日は早めに寝ますね。うう、自分が情けない…」
ルフレが差し出してきた二つの包みを受け取る。ひとつは高級感ある整った箱、もう一つはシンプルだが青いリボンで丁寧に包装された箱だ。そういえば今日はバレンタインだ。しかしなんで二つ渡してくるのだろうか、とルフレの顔を覗き込めば、少しだけ頬を赤らめ忙しなく自身の髪を弄っている。いつも落ち着いている彼女が珍しい。
「一つはちゃんとしたお店で買った菓子で、もう一つは…私の手作りです」
「手作りだと?」
「手作りといっても、ルキナに協力してもらったのでそこまで酷い味ではないはずです。ただやっぱり鋼の味には勝てなかったというか…その…」
指で髪をくるくると巻き、歯切れ悪そうに呟くルフレと、手の中にある白と青を基調にした包みを交互に眺めた。
ルフレは率先して料理を作るタイプではない。ましてや菓子なんて作るのは意外だった。風味が鉄臭くなるだけで、彼女の食事は普通に食べられるから本人が気にする程のレベルではないと料理でヴェイクを卒倒させた経験があるクロムは考えている。
「食べるのが嫌でしたらいつもの高級菓子の方だけ受け取ってください。こちらはガイアさんのお勧めですから文句なしに美味しいはず…ってクロムさん、いきなり容赦なく包装を破きますね!」
躊躇いなく手作りの方の包装紙を破き中の箱を取り出すと、ルフレが悲痛な声を上げる。
蓋を開けるとそこには二色のクッキーが綺麗に鎮座していた。
「ああ、包みにも一応手間暇をかけたというのに…」
「うまそうじゃないか、お前の言い方だともっと酷いものを想像した」
「それはまあ、ルキナがちゃんと見ていてくれたのですから。私にだって意地はあります、酷すぎる出来のものを渡せるわけないじゃないですか。ただ…」
嘆くルフレを尻目に、クロムはこみ上げてくる笑みを隠せず一枚取り出し彼女に見せてみる。
同じく料理を得意としないリズから名状し難い菓子らしき何かをもらったことがある為少しだけ不安は抱いていたが、これならば普通に美味しそうだ。何より愛する妻と愛娘が協力して作ってくれた物、嬉しくないわけがない。
ルフレはどうやら気を使って既製品を送ってくれているみたいだが、実を言うと出来はどうであれ愛妻から手製菓子を貰い歓んでいる友人や部下たちが羨ましかったこともあるのだ。あの菓子に異常な拘りを見せるガイアでさえ、妻の手製菓子を幸せそうに頬張る位なのだから、きっと一般的な美味を超えた何かがそれに込められているのだろう。
「いいですか、まずかったら無理して食べなくてもいいですからね!」
不安そうにこちらを見上げてくる妻の前で、クロムはつまんだ一枚を口に運んで見せた。
さっくりと焼かれたそれは、ルフレらしく甘すぎず、かといって物足りない程ではない。確かに微かだが鋼の味はするが、バターの風味に隠されてそこまで目立つわけではない。
ルフレは眉に皺を寄せ、味わって食べているクロムをじっと見つめている。慣れないことをして疲れているだろう姿が意地らしくて愛しい。空いている左手で彼女を抱き寄せた。
「ど、どうでしょうか…?」
「俺はまずかったらまずいと言う」
胸に手を当て、緊張した面持ちで見上げてくるルフレの顎を捉えると、クロムは菓子の余韻が残っている口で彼女の唇を塞いだ。
安々と口内に侵入すると、ちゃんと味がわかるよう驚くように縮こまっているルフレの舌を捉え、自身のものを擦り付ける。
「ん、んんぅ」
震える背中を摩り、ついでと言わんばかりに彼女の口内を好き勝手に這い回り堪能した。
胸を叩かれて名残惜しいが口を離せば、ルフレは唇を抑えて口をパクパクと魚のように動かした。
「ほら、まずくないだろ?」
二枚目のクッキーをかじりながら笑いかけて見せる。ルフレはしばらく言葉が出ないのかクロムをみてブルブルと震えていたが、我に返ったかのように赤くなって「やり方が直接的すぎますから!」と叫んだ。
「ははは、今のお前の顔ゆでた蟹みたいだ」
「何回も味見しているから自分が作ったものの味くらい知っています!それでも鋼の味が取れないから言っているのにクロムさんったら…もう!」
「ガイアには悪いが、今まで貰ったどんな菓子よりもうまく感じるよ。なによりお前の気持ちが嬉しい…有難う、ルフレ」
菓子箱を傍らに置いて、クロムはすっかりと赤くなったルフレを抱きしめた。
ルフレは最初照れ隠しのようにもがいていたが、すぐに大人しくなりクロムの胴に手を回す。
まだこの世界のルキナは赤子だから、妻と娘に想われることがこれ程までに幸せなのか気づかなかったが今なら確かにわかる。菓子作りをしていたせいかいつもより甘い香りがするルフレの髪に鼻を寄せると、腕の中にすっぽりと収まっている彼女がポツリと呟いた。
「…ルキナには感謝しないといけませんね、セレナさんの恋愛指南書、私も借りようかしら」
「ん、何か言ったか?」
「いいえ。クロムさん、大好きです」
満ち足りた顔で胸に寄りかかり愛を告げる彼女がたまらなく愛しい。
クロムは溢れ出てくる言葉の代わりに応えるよう、そっと額へ口付けを落とした。
「いや~おそるべしですね、アンナさんの手作り菓子キット…」
「いえ、これはお父様とお母様の絆が改めて生み出したものですよ」
まるで付き合いたての恋人のようにイチャつく両親を天幕の隙間から眺めながら、ルキナとマークはこそこそと、しかし満足げに会話をしていた。
「しっかし母さんの料理は呪いなのでしょうか、ルキナさんと同じ手順、材料で作ったにも関わらず母さんのだけ鋼の味がするのですよ?ロランさんに解明してもらえないかなー」
「うふふ、とても懐かしい味で昔を思い出しました。私にとっては思い出の味です」
「おお、これが噂に聞く母の味ってものですね!いやーまずいけどなんだか癖になる味なんですよね、母さんの料理って」
「もう、まずいだなんて…お母様に失礼ですよ、マーク」
悪気なしに言い放つ弟を諭すと、二人の世界を邪魔しないようルキナはそっと天幕の隙間を閉じる。ルキナからも父へ菓子を渡すついでに両親の様子を見に来たのだが、この分だと当分かかりそうである。「昨日一日お母様を独占してしまったから仕方ないですね」とルキナは独り言を呟いて立ち上がり、まだ覗きたそうにしている弟を優しく小突いた。
「マークったら、覗き見のし過ぎははしたないですよ?」
「えー、もうちょっとだけ見させてくださいよー。記憶が戻る切欠になるかもしれませんし」
「お父様とお母様は見世物じゃありません!」
ルキナとて在りし日の仲睦まじい二人を目に焼き付けて置きたいが、これ以上見るのは行儀が悪いと流石に自分でも思う。何より姉弟二人が軍主の天幕前でウロウロしていたら、怪しまれるに違いない。折角のバレンタイン、二人きりの時間を邪魔するつもりはないのだ。
「これからノワール達と菓子交換をする約束をしているんです、マークも良かったら一緒に来ませんか?」
「わーい、おこぼれをもらえるなら僕大歓迎です!行きます行きまーす!」
すぐさま立ち上がり満面の笑みを浮かべる弟に微笑みかけると、ルキナは二人が愛を紡いているだろう天幕に背を向け、仲間たちの元へ足を急がせた。
<END>
クロルフを書こうと思ったのにルキナ中心話になってしまいました。反省はしていません。
本当は漫画か何かで公表する予定だったのですが、それだとただルフレさんがルキナとクッキーを作ってマークがひたすら試食してる話になりそうだったので割愛。クロムさんどこ行った。
お菓子の方が計量をしっかりすれば美味しく作れそうなのでルフレさんは料理より得意そうなのですけど、やはり鋼の味には勝てなかったよ…ネタをやりたかっただけなのです。
あの世界ではチョコはまだ一般兵には手が出ないくらい高いんじゃないかと勝手に妄想して焼き菓子ばかりみんな作っています。ノワールがチョコケーキっぽいものを作っているので深く考えすぎだとは思いますが…カカオ豆とかどこで栽培しているんだろとファンタジーに突っ込んじゃいけないことを考える。
クロムさんは王族だから舌は肥えているのか、熊肉を普通に食べるから食にこだわりはあまりないのか疑問ですがこの話では後者の説を採用しています。つまりルフレさんが頑張って作ったクッキーはそんなに美味しくな(ry)
バレンタイン小説ルフルキ編です。
※注意※
・ルフルキ編のマーク♀が全体的におかしいです。ルキナもキャラが壊れています。
・アズールが可哀想な目にあっています。クロムの妻については特に指定しておりません。
それでも宜しければつづきからどうぞ!
※注意※
・ルフルキ編のマーク♀が全体的におかしいです。ルキナもキャラが壊れています。
・アズールが可哀想な目にあっています。クロムの妻については特に指定しておりません。
それでも宜しければつづきからどうぞ!
「ルフレさん、助けて~!」
バレンタイン、それはファウダーとの対決を前に緊迫した軍内でも甘酸っぱい気持ちになれる特別な日。
軍師ルフレとて例外ではない。女性陣から貰った(義理ではあるが)心のこもった菓子や贈り物の山に私室替わりの天幕内でほくほくとしていると、甘い空気に似つかわしくない少年の悲愴な声が外から聞こえた。
「わ、アズールか。どうしたんだい?」
「どうしたもこうしたもないです、この僕の命に危険が迫っているんですよ!」
普段は軽いノリに見られがちなアズールが必死な顔をして駆け込んできた。日頃の感謝を込めて皆に配っている菓子のチェックリストを一先ず机に置き、顔面蒼白になっている彼の話を聞こうとした、が。
「アズールさーん、み・つ・け・ま・し・た・よ?」
「ひぃ、マーク!」
小さな影が覗き込むと同時にアズールの肩が可哀想な程びくりと跳ねた。彼に後ろから飛びついているのはルフレの愛娘、マークだ。
「あ、父さん!聞いてください、アズールさんったら私を見たら兎さんのように逃げ回るんですよ~」
「そりゃ逃げるに決まっているだろ!?」
「うう…ひどいです、女の子からもらうものはなんでも嬉しいって、前に言っていた癖に!私、貴方のためにすっごい頑張って、心を込めて作ったのに…」
本来ならリスのように首を傾げて目を潤ませている、親の贔屓目抜きで可愛い娘に加担したいところだが、バレンタインという行事に人一倍浮かれてそうなアズールの怯え具合を見る限り何かのっぴきならぬ事情がありそうだ。ルフレは一先ず静観を決め込むことにすると、顔を青ざめさせたアズールが必死に弁明する。
「そりゃいつもだったら泣いて喜ぶくらい嬉しいよ…君のクッキーを食べたブレディが泡噴いて倒れなければね!!」
「あれはブレディさんの為にと特別に作ったものだからですよー!風邪を引かせない魅惑の健康ボディにするために、貴重な砂トカゲの毒入り内蔵と暗黒司祭の生き血と覇王の髭をじっくりことこと一週間煮込んだエキスを練りこんだのです!門外不出の秘伝レシピは、なんと闇魔術のカリスマ・ヘンリーさん完全監修!」
「そんなおどろおどろしい真実を聞いたら余計に逃げたくなるに決まっているじゃないか!」
「あ、ちなみにアズールさん用に作ったこの特製マドレーヌはですね!いつもフラレっぱなしのアズールさんがモテますようにって願いを込めて作ったんですよ~。女の子の前に行ったらジェロームさんみたく喋れなくなって、とーっても誠実になれる素敵な成分をサーリャさんと相談しながら作ったんです!父さん、我ながら名案だと思いませんか?」
「それって僕のアイデンティティを完全に否定してるよね?!」
残酷なまでに無邪気にそう言い放つマークと、死刑宣告を受けた囚人のように絶望しきった表情でこちらを見てくるアズールにルフレは深くため息をついた。マークとしては完全に善意なのだろうが、流石にこれでは彼が可哀想だ。それにブレディの事例を聞く限りとんでもない材料が使われているに違いないだろう。
怯えるアズールの口に妙な色をしたマドレーヌを押し付けている娘(心なしかいつもより生き生きとしている)に視線を向けると、父親らしく止めようと口を開いた。
「マーク、頑張りは認めるけどもアズールが可哀想だよ。確かにアズールはナンパな性格だし救いようもなく軽いけど困った女の子を助ける優しいところだってあるんだから…」
「勿論マークちゃんは大好きな母さんにもバッチリあげました!母さんがデレデレになって父さんといつまでもラブラブでいられますようにってお願いを込めちゃいました。うーん、私ってなんて健気な娘なのでしょう!」
どんぐりのようにクリッとした目を輝かせそう語るマークに、何故だか途轍もなく嫌な予感がした。
――ルキナがデレデレ…?それに、ラブラブって…
妻であるルキナには朝一番に手作りのケーキを貰った。後で一緒に食べようと約束したのだが、それきり今日は姿を見ていない。
単にまずいだけならいい。問題なのはマークの料理には闇魔術的効果があるらしく、以前料理を食べさせられていたジェロームが妙に口達者になり、ロランが服を脱ぎだしワイルドな喋り方になっていたことがあった。本職達との共同開発だ、張り切って作っただけにその効果も絶大だろう。
「アズール、悪いけどこれ以上犠牲者を出さないためにもマークを抑えていてくれ!」
「ええー!ルフレさん、ちょっとどこ行くの!?」
「父さんったら早速母さんのデレデレ効果を見に行ったんですね、本当に母さんラブで羨ましさを通り越して妬ましい限りです!さあアズールさん、あーんしてくださいな」
「マ、マーク、ちょっと待って…そんな変な匂いのするもの口に押し付けられたら、僕…うあああああ、助けてールフレさーん!!」
アズールの悲鳴が聞こえた気がしたが、ルフレの頭の中は愛しい彼女のことで一杯だった。
ルキナのことだ、可愛い娘が作ったものならば例えどんな見た目のものでも快く食べるに違いない。ただでさえ彼女は少し人よりもずれた感性を持っているのだから。
まだ口にしてないことを祈るしかない――!!
しかし、時既に遅かったことをルフレは身を持って知ることとなる。
「はあ、お父様の大胸筋ってなんて素敵なのでしょう…」
「ルキナ、どうした?なにか悪いものでも食べたか?」
ルキナの行方を知らないか聞こうと血相を変えてクロムの天幕に突撃したとき、ルフレは最悪の自体が引き起こされたことを即座に理解した。
恋人であるルフレを前にしても常に凛々しい表情であるはずの彼女は顔を真っ赤にし、呼吸を荒げながら彼女の父であるクロムにべったりと抱きついている。
「うふふ流石お父様、引き締まった大殿筋も素敵ですね。お母様は大好きですけれども、私のお父様を独占するのはやっぱりずるいです…」
「ルフレ…なあ、なにが一体どうなっているんだ?」
さわさわと逞しい体を触り続けるルキナと、明らかに困惑した目でこちらを見つめてくるクロムに思わず頭を抱えてしまう。
マークの自分を上回る闇魔術の才能に対する感心と呆れ、そしてクロムに対する微妙な嫉妬心が一瞬胸をよぎった。他人ではなく父親である彼に絡んでいてある意味よかったとも思えるが、素直に安堵できる程割り切っているわけではない。ルキナは世界と愛する父親を救うためにやってきたのだから。
――と、今は自分の気持ちについてあれこれ考えている場合じゃないな。
いくらクロムの細君が心広くとも、年頃の娘が夫にベタベタしていたら心穏やかではないだろう。まだルキナが娘だとわかる前、抱き合っている二人を見て相当ショックを受けていたのだからなおさらだ。この現場を見られたら折角のバレンタインが険悪な雰囲気と化すのは想像に容易い。
「ルキナ、スキンシップはここまでだ。クロムが困っているじゃないか」
「ルフレさん…?」
薔薇色の頬、とろりと蜜のように溶けた青い瞳がこちらをじっと見つめてきて、ルフレは不覚にもドキリとしてしまった。こんな女の顔でクロムを見ていたのか、と言葉を失い慌てて視線を逸らして彼の体からルキナを引き剥がした。
「助かった、礼を言う。…おい、なんで睨んでくるんだ?」
「なーんでも。なあ、ルキナ借りてってもいいか?どうやらマークの菓子に当てられたみたいなんだ」
「菓子に当てられる…?なんだよそれ」
「詳しい話は後だ!クロム、くれぐれもマークに何かを貰っても食べちゃ駄目だよ。命の保証はしないからね」
「?ああ、わかった」
唖然としているクロムを前に半ば引きずるようにルキナの手を引き天幕の外に出ようとする。
「…ルキナに妙なことはするなよ?」
「僕は君と違って手が早くないから」
憮然とした顔で腕を組むクロムを皮肉るようにルフレは笑いかけると、「おとうさまぁ」と舌足らずな声で父を呼ぶルキナをズルズルと引きずりながら正気にさせる方法を考えた。
人がいないことを確認すると、ルフレはルキナを伴い武器庫替わりの天幕へと入っていった。
薄暗く埃っぽいそこではあるが、デレデレを通り越してドロドロになっているルキナの無防備さには流石に何かを致す気にはならない。普段は隙を見せないからこそ色々悪戯したくなることはあるのだが、木箱の上に腰掛け足をぶらぶらさせている彼女の無邪気さには欲情よりも心配さが勝るのだ。
「ルキナ、ほら水」
「いやです」
駄々っ子のように頬を膨らませ、ぷいっとそっぽを向くルキナはどこかマークに似ていた。まあ母親だから当たり前なんだけどさ、と水筒片手にため息をついていると急にルキナがグッと顔を近づけてきた。
聖痕が刻まれた虹彩がじっとこちらを見つめてくる。ルフレも大分この状態の彼女に慣れてきたため、対して動じずに首を傾げた。
「どうかした?」
「…あなたが口移ししてくれるなら、のみます」
「えー…?」
普段のルキナなら絶対言わなそうな言葉に、ルフレはそれしか口に出せなかった。
あんぐりと口を開けていると、彼女の青玉のような瞳に透明な雫がみるみると溜まっていく。
「ル、ルキナ、なんで泣くのさ?」
「だって、ルフレさんったら、朝から女の人にたくさんお菓子もらってて…」
「え?」
「お父様にくっついていても、あなたはいつもどおりの顔してて…私のこと、結局こども扱いしてるんです」
はらはらと彼女の頬を流れ落ちていく涙にルフレは呆気に取られてしまう。
そういえば収穫祭の時、デジェルがこんな状態だったとげっそりとしたセレナに聞いたことがある。なんでも人に秘めていた想いを打ち明けてしまう秘薬なるものを飲んでしまったからだと。
――もしかしてマークはその秘薬とやらをどこかで入手したのか、もしくは自分で作ってしまったのか…?
顎に手を当て推理していると、頬に痛みが走り目を瞬かせる。
見れば涙を流すルキナに頬を掴まれ引き伸ばされていた。
「…ルフレさん、ほかの女の子のことかんがえてますね?」
「ほんらほとらいはら!」
「…わたしだけが、こんなに好きで…好きでしょうがないのに、ルフレさんなんてアズールといっしょなんですね…」
頬の痛みとグサリと刺さる一言にうう、と呻き声を漏らした。いくらなんでもアズールと同類に扱われるのは傷つく。ルフレが異性として傍にいたいのはルキナだけなのだから。
「ひ、ひひゃいよるきな…」
「じゃあ口移ししてください、そしたらはなしてあげます」
これがマークみたいにこちらをからかって言っているならまだ叱れるのだが、ルキナの涙に濡れた目はいつものように真剣で、真っ直ぐこちらを見つめてくる。
クロムに似て思い込んだら一直線な彼女がここで引くとは思えない。ルフレは冷や汗をかきながらこくこくと頷くと、ようやく彼女は指を離してくれた。
――僕だって、ルキナのことこんなにも好きなのになぁ…
外套の隠しポケットに入れっぱなしの指輪のことを思い出しながらルフレは髪を掻きあげる。
もしルキナが使命を果たし、世界が平和になった時。
そして自分がクロムを殺さずに済んだ時、この指輪を渡そうと決意していた。
もし自分がファウダーの支配に屈してしまった時に、彼女の妨げになりたくなかった。指輪を送ってしまえば不器用な程真っ直ぐな彼女は使命と愛の誓いの狭間に苦しんでしまうだろうから。
未だに子供扱いするような態度を取ってしまうのは、この恋が憧憬からくるまやかしだといざという時彼女が切り捨てられるようする為だった。
――だったら告白するなって話だけど、ルキナが他の男に取られるのも嫌なんだ。
クロムと話す彼女を見るだけで嫉妬してしまうくらいなんだから。
我が儘な自分を自嘲するように口元を歪めると、覚悟を決めて水筒に口をつける。
ルキナは涙に濡れた睫毛を伏せ、ルフレからの口付けを待っていた。
薄く色づいた唇を心ゆくまで吸い付き貪りたい、という男の欲求をなんとか抑えて彼女の口に自らのものをそっと押し付けた。
「ん…」
ルキナの小さな喘ぎ声に、彼女の柔らかな髪を撫でながら水を伝わせていく。
体温に比べれば冷たい水が彼女の喉を潤したことを確認すると口を離した。
――…これ以上はダメだ。
このまま続けたい気持ちはあったが、抑えられる自信がないから慌てて顔をそらした。
クロムにも変なことをするなと釘を刺されている以上その先のことは出来るはずがない。しかしルキナは未だに瞼を伏せており、心拍数は落ち着くどころかむしろどんどん忙しなくなっている気がする。
「ルキナ、そのまま聞いていて欲しいんだ」
照れと自分の欲を抑えるために彼女から背を向け、唇を抑えながらルフレは言葉を紡ぎ出した。
「僕は軍師である以上、なるべく人を均等な目線で見なくてはいけない。ましてや君は親友の娘だ、恋人なのに必要以上に兄ぶっていたところはあるからそれは謝るよ」
ルキナがどんな顔をしているかこちらからは見えない。また泣かせてしまっているだろうか、それでもルフレは心の底にある言葉を口にしつづけた。
「でも、こうやってキスをしたいのはルキナだけだ。共に生きていきたいのも、作った料理を食べ続けていたいのも君だけなんだ。正直に言うとね、クロムと君が話しているだけでも僕はイライラするんだよ。君にとって誰よりも大切な人だってことはちゃんとわかっているし親子の愛情だって知っている。けれども二人の絆に入れない自分がどうしようもなく悔しいんだ」
突如むき出しにされた黒い感情に、ルキナは怖がってしまっているだろうか。呆れてしまっているだろうか。不安はあったが、今ここで口にしとかなければ届かなくなってしまうかもしれないという謎めいた予感があった。マークの悪戯も、父親の煮えきれない態度を見てこの薬を仕込んだのではないかいうと深読みさえしてしまう。
「僕はもう、ルキナのことをクロムの娘として仲間として…建前はともかく本心ではそんな風に見ていない。異性として…ちゃんと愛してる。だから、この戦いが無事に終わったら」
たまらずルフレは振り返り、ルキナの意志を確認しようとする。ポケットの中の指輪が踊り、指でその感触を確かめながら意を決し視線をしっかりと合わせた。
彼女は唇に手を当て、目を丸くしながらこちらを見ていた。
「ル、ルフレさん…?」
「ファウダーを倒して落ち着いたら、僕は君に!」
「私、何をしていたんですか?」
ルキナの思いがけない言葉に、思わず勢い余って転んでしまいそうになった。
当の彼女は困惑したように視線を彷徨わせており、先ほどの熱にうかされたような色が瞳から消えていた。
「えっと…ルキナ?もしかして、覚えていないとか…」
「はい、おぼろげにならお父様と話していた記憶はあるのですが、その…」
ごめんなさい、と眉を八の字にして謝る彼女はいつもの涼やかな眼差しをしており、なんでよりにもよってこのタイミングで我に返るのかとルフレはタイミングの悪さに嘆きたくなった。
そういえば以前子世代男子陣でのマークによる菓子の人体実験効果も一時的だったことを思い出す。どこからともなく「これも策のうちです!」という可愛らしい声が聞こえた気がしてがっくりとうな垂れた。
「私、貴方に何か失礼なことをしてしまったのでしょうか?」
「…いや、いいんだ。君はマークの特製手作り菓子にあてられていたんだよ。正気へ戻ってくれてよかった」
「マーク…?そういえば、マークからピンクの可愛らしい形をしたマカロンを貰ったような」
絶対それだ、とため息をついてルフレは首を振って情けない気持ちを振り払った。
人に頼っていてはそう都合よく行かないか、と出しかけていた指輪をポケットの奥へ落とし笑顔を浮かべる。
――それでも、率直に彼女へとこの気持ちを言えたんだ。胸のつかえが取れた分、これからはもっと素直な気持ちでルキナに向き合える気がする。
そう前向きに考え、ルフレは自分の頬を軽く両手で叩いた。そして必死で自分がしたことを思い返している愛しい彼女に微笑みかけ手を差し伸べる。
「君は何も悪いことをしていないよ。なあ、折角だから口直しにお茶でもしないか?君から貰ったケーキでさ」
ルキナは何度か目を瞬かせていたが、目尻に残っていた涙をそっと拭うと微笑みルフレの手に自らの指を絡めた。
「…はい、今までで一番美味しく作れた自信作なんですよ!お父様には内緒ですけど、ルフレさんの方を一回り大きく作ってみたんですよ?」
「ははは、それは嬉しいな。ルキナは料理上手だからね、僕とマークに正しい料理の仕方を教えてやって欲しいくらいだ」
「うふふ、そのうち三人で料理教室やりましょうね」
二人で顔を見合わせてはにかみ合い、埃っぽい天幕から外へ出る。
ルフレの天幕へと仲良く手を繋いで歩いていた途中、ルキナがふと足を止めたことに気づきルフレは振り返る。
「どうかしたのかい、ルキナ?」
「…私も、愛していますから」
顔を赤くし、熱を帯びた唇に触れながら呟かれたルキナの小さな告白は風に遮られ、ルフレに届くことがなかった。しかし彼は恋人の表情を見て理解したのか、そっと頷いて彼女のしなやかな指を握り締める。
今はまだ確かな誓いを言えないけれど、この手を離すつもりはないのだと。
二人が天幕に戻ったとき、妙にクールな眼差しかつ紳士的な物腰でルフレへと語りかけてくる奇妙な態度のアズールと、「ウードさんが現実的な思考回路かつ堅実な趣味になるカヌレを渡さなきゃ!」とせわしなく羽ばたくコマドリのように飛び出していくマークの姿を見たのはまた別の話。
〈END〉
連載抜いたら初めてちゃんと書いたルフルキなのになんか色々…すみませんでした。
凛々しかっこいいルキナちゃんがどこにもいないです。そしてマーク♀を書くのが楽しいこと楽しいこと…アズールの扱いがいつも悪くてどうしてこうなった感が。
一応マークは自分の料理が危険だということには薄々気付いていて、お父さんには普通の鋼味菓子をあげています。ただ彼女としては完全な善意なので逆にそれが皆を恐怖に陥れているとか…
イーリス子供世代の女子会はなんだかおどろおどろしそうですね、料理的な意味で。
本当は「チョコは本来媚薬的な食べ物だったんですよ☆」なマークを書きたかったのは秘密です。
そのうちルフルキマーク家族ものをしっかり書いてみたいです。マークは両親大好きですけど父>母、ルキナも父≧恋人的なところがあるのでそこら辺をテーマにした話でも。
ギャンレル討伐後、強制結婚のタイミングを逃したクロルフの話。
シリアスで糖度は低めですがハッピーエンドです。
つづきから本編+作品解説。
シリアスで糖度は低めですがハッピーエンドです。
つづきから本編+作品解説。
「ルフレさん、お仕事中失礼ですが、貴方にご相談があります」
暖かい昼下がり、あくびを噛みしめながらいつも通りルフレは執務を行っていると向かいの机で同じく調印をしていたフレデリクが問いかけてきた。
効率を最優先する彼が仕事中に話しかけてくるなんて珍しい。ルフレは一旦羽根ペンを置いて「なんでしょうか?」と耳を傾ける。フレデリクは心なしか神妙な顔持ちでルフレの目をじっと見つめていた。どこか試すようなそれに少しだけドキリとする。
「クロム様の縁談の話です」
「縁談?」
「エメリナ様亡き今、イーリスの士気を上げる為にも貴族達はクロム様に縁談を勧めています。私としては早すぎると思いますが、新しい聖王のアピールとしても有効であり、今回の事件もあり次期後継者を早々と作っておきたいという意見は最もです」
「…確かに」
渋い顔をして発言するフレデリクにルフレもまた苦い想いを抱きつつ頷いた。
まだエメリナの喪も明けていないというのにクロムにこんな話をするのは酷だと思う。しかし聖王代理という地位は、世界で最も愛していたという彼の姉を悼む暇さえ許さない。貴族達が言っていることは戦争で疲弊した国民の求心力を上げる為にも間違っていない事なのだ。
「そこでクロム様の婚約者…次期王妃になる者について、貴方の意見を聞いておきたいのです」
実直な従者がこちらの真意を探るように見据えてきた。
それは軍師として意見を求められているのだろうか、それとも。
今は仕事中だから深い意味はないだろうと、ルフレは考えをそのまま口にする。
「貴族達に推される者と結婚するのは王家の権力失墜に繋がると思いますが、まだ若く執政に慣れていないクロムさんの強力な後ろ盾を得る手の一つです。
ですが国内の混乱が残る今、私はなるべくなら信頼のおける自警団の者と結婚するのがいいかと。…そうですね、テミス伯の子女であるマリアベルさんは聡明で王妃に最適だと思います。その他にも由緒ある騎士の家系で民からの人気もクロムさんとの信頼も厚いソワレさん、平民との融和政策を取るならばスミアさんがいいかと思います」
フレデリクの目が細められている。睨みつけるような視線に内心驚きながらもルフレは構わず言葉を続けた。
「フェリアとの蜜月をアピールするならば他国の嫁…オリヴィエさんが容姿人気共にいいでしょうね。ですがこれは私の軍師としての一意見です。最終的にはクロムさんが決定することですから彼の友人としては悔いがない選択をして貰いたいです」
「それだけですか」
深く溜息をついた後、フレデリクは厳しい視線を向けながらルフレに語りかけてくる。
「それが貴方の本心なのですか、ルフレさん」
「どういうことですか」
「貴方のことですからクロム様のお気持ちをご存じなのでしょう?何故そんな他人事のように言うのです」
フレデリクには勘付かれていたのか。ルフレは眉を顰めながら重い溜息をつく。
ペレジアとの争いが終わった後、多忙を理由にルフレがクロムから身を遠ざけていることを気にかけていたのだろう。この忠実な従者も妻がいることだからいい加減クロム離れしたらいいのにと思いつつ、ルフレは平静を取り繕ろった後に軍師としての厳しい視線を投げかけた。
「それがどうしたというのです?私はクロムさんの親友で軍師です。イーリスの国益になる候補を勧めて何かおかしいと?」
「貴方自身がクロム様の妻になり支える、という方法もあるではないですか」
「…冗談やめてくださいフレデリクさん。私はギムレー教団最高司祭の子でギムレーの器ですよ」
睫毛を伏せてルフレは自嘲気味に笑う。
イーリス自警団の門戸を叩いたのも今でこそクロムを支える為だったが最初は違った。
ギムレーの器である自身の身柄の保護と、ファウダ―に対する個人的な復讐。
他の仲間達とは明らかに違う後ろ暗い理由があったのだ。
「ペレジアとは停戦をしているとはいえ、教団とファウダ―が今更ギムレー復活を諦めるとは思えません。近いうちにこちらに対し何かしらのちょっかいをかけてくるでしょう。それにペレジアからの難民を受け入れているとはいえ、両国間の溝は当分埋まりそうもない。仮に私が王妃となったとしても、先代での戦争やエメリナ様の事がありましたから…民から到底受け入れられないでしょうね」
「私は貴方の出自について聞いている訳ではありません。それにクロム様はそんなことを気にされる方では…」
「だからこそです!」
ルフレは一際大きい声で言葉を放った。
口を挟もうとしたフレデリクはルフレが滅多に見せない感情的な姿に少し目を大きくし口を閉ざす。
「あの人は誰にでも手を差し伸べ助けてしまう器の持ち主です。それが彼の長所でもあり、王としては致命的な欠点になりかねない…個人の想いなんて関係ない、私は軍師として嫌なんです。不安の目は確実に取り除いていきたいんです!私のせいでクロムさんが悪く言われるのも彼に余計な負担がかかるのは絶対に避けたい…これが私の望みです」
傍に置いてあった呑みかけの紅茶に波紋が走る。
ルフレは思わず立ち上がって力説していたことに顔を赤くした。
思わずムキになってしまった。これでは軍師失格だ、とルフレはうつむく。
「ごめんなさい、怒鳴ってしまって…」
「いえ、私こそ余計なお節介をしてしまったみたいですね」
フレデリクも少しだけ罰の悪そうな声で呟いた。踏み込んではいけない箇所に触れてしまったと自覚しているのだろう。彼とてクロムとの仲を心配しての質問だっただろうに、と罪悪感が増す。
「ともかく、私は彼のことをよい親友、半身として…そして軍師として必要があればずっと支えていきたいと思っています。この想いに嘘偽りはありません。」
「そうですか、ルフレさんがそう言うならそれでいいのです。私からは何もいうことがありません」
ですが。彼は言葉を続けながら気遣わしげな瞳でルフレを覗きこんだ。
「クロム様はそんな理由で納得されるお方ではありませんよ」
そうだ、きっと彼は理屈をこねた所で退く男ではない。
それが彼の危うさでありルフレを救う良さでもあったのだけど。
ルフレは座りなおすとフレデリクからそっと視線を逸らし、再び執務の資料を開いて作業を再開しようとした。
「…きっと身近で危険を共にしたから、それを恋愛と勘違いしているんです、吊り橋効果というものを以前本で読んだことがあります。クロムさんも平和の中で落ち着けば、王として成すべきことに気付くはずですよ」
自分にも言い聞かせるように呟きながらルフレは羽根ペンにインクをつける。
フレデリクには一つだけ嘘をついている。本当は一人の女性としてもクロムの傍にいたい。
だがその想いは彼の為に封印すると決めたのだ。まだエメリナが生きていた頃に裸を見合ってこれで隠し事のない一心同体の親友だと笑い合ったのだからきっと出来るはずだ。
――このまま距離を置いて自分が男として見ていない事がわかれば、クロムもきっと目が覚めるだろう。そう、自分さえうまく立ち振る舞えばいいのだ。
何かを振り切るようにペンを走らせるルフレを見つめ、フレデリクは反論しようとしたが言葉が見つからずやりきれない思いを抱えながら冷めて渋くなった紅茶を飲み干した。
*
それから数週間後の夜。
クロムははやる心を押さえて月夜に照らされる廊下を歩いていた。
最近フェリアやイーリス領主達との会談やペレジアとの戦後処理で各国を走り回っていたが、ようやく状況は落ち着き久方ぶりにイーリス城へ帰って来られたのだ。
誰と会っても話題になるのは縁談やら世継ぎの話で正直辟易としていた中、久しぶりに帰るイ―リス城は落ち着いていて、忙殺されて忘れていた姉との思い出が蘇り少し感傷的になる。
――早く彼女に会いたい。
クロムはポケットに入っている小さな箱の角に触れながら微かに笑みを浮かべる。
ルフレとは裸を見られて親友の誓いをした後どこか気まずくて顔を合わせられず、そうこうしているうちにエメリナが連れ去られてしまった。それ以来、軍議以外のことをあまり話せずにいる。
あの頃は姉を失って余裕がなかったが、いつも傍らにはルフレがいてくれた。彼女がいてくれたお陰で逆上して突撃することなくギャンレルを討つことが出来たのだ。
本当はギャンレル討伐後に告白しようと心に決めていたのだが、祝辞を述べるスミア達自警団面子に囲まれ、さらにバジーリオとフラヴィアが軍を巻きこんで大宴会を始めてしまった為に、なんとなくいいそびれてしまった。
宝飾品の類はわからないが、同行していたリズにも意見を聞いたから大丈夫だろう。
ルフレは喜ぶだろうか。以前女性の扱いを云々と説教されたから驚かれるかもしれない。
そうこう考えているうちに私室の扉前まで来ており、クロムは深呼吸する。
やはり緊張する。しかし会いたい気持ちの方が勝って思わず強めにノックをした。
「ルフレ、いるか?」
気合を入れてノックしたものの返事がない。
…よくよく考えたら帰ってきた時は既に日が暮れており、今は真夜中と言ってもいい時間だ。
窓から見える満月にいくらなんでも焦り過ぎたか、と溜息をついてしまう。
これだから俺はデリカシーのない男だとか言われるんだと思っていると扉が少しだけ開かれた。
「クロムさん…?」
暗がりでよくは見えないが、ルフレはトレードマークである黒い外套を着ているようで、少なくともまだ就寝はしてなかったことに気付かされ安堵する。
「今日御帰りだったんですね、お疲れ様です」
「ああ、ただいま。…少し話がしたいんだが、いいか?」
ルフレは一瞬だけ戸惑ったようで扉がキィ、と音を立てる。
無理もない、明日も仕事があるのに無茶をさせてしまっただろうかと少しだけ後悔したものの、「構いません」と小さく頷き彼女は扉を開き招き入れた。
「おまえとゆっくり話すのも久しぶりかも知れんな」
「そうですね…」
帰る場所がない彼女の為に用意した城の一室もいつのまにか本だらけになっており、呆れ半分関心半分で見まわしているとルフレが香草を浮かべた水差しを持ってきた。
「ごめんなさい、厨房もお休みしていて大した振る舞いも出来ませんが…」
「いや、俺こそ夜遅くにすまん。だがお前にどうしても話したいことがあってな」
ルフレの手によってグラスに注がれている水が微かに揺れたがクロムは気付かない。
クロムはその間落ち着かずポケットにしまい込んだ箱に触れたりファルシオンの鞘をいじっていたりしたが、彼女が席に座ったことを確認すると意を決し口を開いた。
「実は、縁談の話が俺に来ていて…」
「ええ、知っていますよ」
さらりと口を挟むルフレに、意気込んでいたクロムは出鼻を挫かれ彼女を思わず見つめてしまう。
彼女は微笑みながら、しかし決してクロムの方を向かずにランタンの明かりで照らされるグラスを見つめていた。
「フレデリクさんから聞きました。ふふ、クロムさんもまだまだ公務で忙しいというのに大変ですね」
「ああ、それでその件についてなんだが」
「それでクロムさんは、誰と結婚なさるつもりですか?」
クロムの言葉に重ねるように、ルフレが矢継ぎ早に質問してくる。
今日のルフレは少しおかしい。いつもはこちらの話をしっかりと聞くのに、どこかそわそわしているというか、心あらずというか。
クロムが疑問に思い口を閉ざしていると、すかさずルフレが言葉を続けてきた。
「やはり今回の行軍に連れて行かれたスミアさんですか?お二人は仲がよろしいですし、女性らしく可愛らしい。きっと民からも平和の花嫁として受け入れられるでしょうね」
「…ルフレ、何を言っているんだ?」
「それともソワレさん?マリアベルさん?もしかして、オリヴィエさんですか?…それとも、私にも言えない方を隠し玉に持っているとかですか?嫌ですね、クロムさんったら水くさい」
「ルフレ!」
ルフレの睫毛が震える。しかしそれでも彼女は視線を合わせてこない。
グラスの縁に指先を這わせながら、ことさら明るい声を出してくる。
「クロムさんが結婚したら、私も身を固めないといけませんね!独身のままだと皆さんに誤解されちゃいます…傾国の美女なんてあだ名がついたら少し嬉しいですけど、私の容姿ではちょっと無理でしょうし」
「ルフレ、俺の話を聞け!」
水差しが倒れ、机と床に水が跳ね広がる。転がり落ちた水差しがパリンと音を立て砕け散った。
気付けばクロムは机を乗り出し彼女の手首を握りしめていた。
「…クロムさん、痛いです」
離してください、とルフレが睨んでくる。しかしクロムはそれに怯むことなく見つめ返した。
「俺の話をちゃんと聞けばな」
「…貴方は王となる身。いくら私のことを女と思っていなくとも、不用意に未婚の女性に触るものではありません」
未来の奥様と喧嘩になりますよ、そう他人事のようにのたまう彼女にクロムはふつふつと怒りが湧いてきた。
こんなにもルフレのことを想っているのに、彼女は見当外れのことを言うばかりか身を固めるだの言いだす。
それが許せない。もう我慢ならなかった。
月光に照らされる彼女の体をぐい、と引っ張り寄せ肩を掴み無理矢理こちらを向かせ夜にも構わずクロムは叫んでいた。
「俺はお前のことを女だと思っている、それに俺が好きなのはお前だ、ルフレ!」
声の振動でランタンの炎が大きく揺れた。
衝動にまかせて告白してしまったことに内心しまった、と顔を顰める。
もう少しこう、ムードというものがあっただろうに、と疎いながら失敗した、と後悔する。
ルフレは一瞬目を見開いたが、すぐいつもの顔に戻りクロムの胸をそっと押した。
「ごめんなさい、私は貴方の事を異性だと思えません…親友として、私は貴方のことが好きです」
そう言ってルフレは髪をなびかせクロムの腕からすり抜けていく。
断られることは考えていた。だがあまりにもあっさりとした幕引きに、クロムは茫然と離れていく彼女の姿を目で追う。
ルフレは窓の前に立つと、窓枠に手を当て小さな声で呟いてきた。
「それにクロムさん、貴方の想いもきっと勘違いですよ」
「勘違い…?」
「そう、勘違い。貴方はエメリナ様を失くして心が弱っていたから精神的支柱を求めていただけなんです。たまたま私が傍にいたからそう思いこんでしまっただけ…もっと視野を広げてください。見回してみれば、貴方を想うふさわしい女性は沢山いますよ?」
確かにあの時は我武者羅で、縋りつくものがないと怒りで我を忘れてしまいそうで半身だと手を繋いでくれたルフレに頼っていたのだ。
しかしそれだけではない。そう言いたかったのに言葉が足りない。
結局ルフレに口では絶対にかなわないのだ。
否定できずに黙って見せれば、彼女はそうでしょう?と笑顔で振り返る。
青白い月明りを背景にして微笑んで見せる彼女は戦場で見せる凛とした姿とはかけ離れて、か細い一人の女性がそこにいた。
「それに軍師と軍主がそういう仲になっては皆に示しが尽きませんし、いざという時正確な判断も出来ません。大丈夫、妻でなくとも私は必要とされなくなる日まで貴方の傍にいます。貴方が立派な王になる姿を友として臣下として見守っていきたいですから」
もうギムレーに振りまわされるだけの人生じゃないですからね。
そう呟くルフレの声が微かに震えているのを聞き逃さず、クロムははっとする。
必要とされなくなる日?
…いつ、誰がそんな日を決める?
彼女はなんだかんだと理由をつけて、いずれクロムの元を去ってしまうのではないか?
クロムの為といいつつ、身勝手な理由で。
「さ、明日も仕事があります。クロムさんもそろそろ休まないとまたフレデリクさんにお小言言われちゃいますよ?」
嫌だ。
もう大事なものは失わないと誓ったのだ。
クロムは再び窓の外を見上げるルフレの小さな背中にそっと近づく。そして紫の痣が刻まれた掌に手を重ね背後から抱きすくめた。
逃げ回っていてもいずれはこうなることはわかっていたから、早めに傷つけて決着をつけておきたかったのだ。
ルフレは窓の月を見上げながらそう考えていた。
夜道を優しく照らすその星もよく見れば傷だらけなのを知っている。
クロムが太陽だとすれば、私は月になれればいい。
彼の眩い光を受けて、闇の中密かに見守っていければと思っていたのだ。
そしていつか自分がした選択を笑える日が来る。彼の子を、彼の行末を祝福する日が来るのだ。
冷たいガラスに額を当てそう願っていると、不意に温かい感触を感じ視線を掌に向ける。
皮のグローブに覆われた大きな手がルフレの邪痕に刻まれた手に重ねられていた。
「勘違いなんかじゃない」
先程の感情的な声とは打って変わって低く静かな声に、ルフレの鼓動は跳ね上がる。
「確かにお前はペレジアとの動乱の時に傍らにいてくれたし支えてくれた。それは紛れもない事実で俺はお前の優しさと強さに寄りかかっていた。…でもそれは決して誰でも良かったわけじゃない」
もう片方の手でしっかりとルフレの腰に手を回しながらクロムは言葉を続ける。
逃れなくてはいけない。
そう思っても重ねられた手はビクともしない。
違う、自分が動けないのだ。…本当はこの温もりを誰よりも求めていたのはルフレ自身だ。
「お前が何を気後れしているのかわからないが…俺は本当にお前が好きだ。半身であるお前じゃないと駄目なんだ。我ながら女々しいと解っている…だが一時的な気の迷いだとお前には思ってほしくない」
そう静かに告げられると掌に指が絡まってくる。
本当は振りほどかないといけないのに、ルフレは瞳から零れそうな涙を押さえるのに必死で出来なかったのだ。
この人はなんで、こうも簡単に人の心へと踏み込んでくるのだろうか。
深く深く牢に封じたつもりの想いをあっさりと見つけ出し掬いあげていくのだろうか。
――違う、彼の優しさに寄りかかっていたのは私だ。
人を疑わず、負の感情に塗れていたルフレを包み込み、時には叱咤してくれた太陽のような人。
敵国の自分をあっさりと受け入れ軍師として頼ってくれた彼を独り占めしたかった醜い心を知られたくなくて、彼の太陽のような光をギムレーの器という一片の濁りから遠ざけようと思ったのだ。
「…泣いているのか、ルフレ?」
窓越しに涙を零す姿を見られたのか、彼の優しい声音に堪えようとしていたものが溢れ出していく。雫が月光の光で輝き、床に跳ねて散っていく。
「私は…私はファウダーの娘で、貴方を復讐の道具にしようと近づきました。それでもいいんですか?」
「知っている。お前から話してくれただろう」
「ギムレーの器で…女らしくなくても、気品ある達振る舞いもできません…そんな人を選ぼうなんて、貴方は馬鹿です、大馬鹿です…」
「全部構わないし、馬鹿でも構わない。お前を失うくらいなら愚かな王でいい」
「…ほんとに、酷い王様、ですね…」
そう、彼に理屈は通じない。
いつだってこうして、行動に起こしてしまう力がある。
剥がれてくる心の殻を受け止めるように、クロムはルフレの流れる涙を掬って行く。
握りしめられた掌が、指の先が熱い。その温かさに建前も言葉も失いルフレは嗚咽をあげながら泣いた。
そんな彼女の体をクロムはより強く片方の手で抱きしめる。
もう言葉なんていらなかった。
水差しの破片がランタンと月光で煌めく中、男女はようやくお互いに向き合う。
そしてそのままゆっくりと、繋いだ手はそのままにふたつの影は重なり合った。
「…私、貴方のことが好きです。貴方しか見えなくなるくらいに」
「俺もだ、ルフレ」
自然と互いに目を伏せ、口づけを交わす。離れていた魂を確かめあわせるように何度も。
机に広がり端から零れ落ちていた水はいつのまにか乾いており、天上の月だけが、2人の姿を祝福するように優しく照らし出し見守っていた。
*
「それで2人仲良く遅刻というわけですか」
「…すまんフレデリク」
「ごめんなさい…」
にこにこといつも以上に微笑んでいるフレデリクを前に、クロムとルフレは内心青ざめながら仲良く頭を下げていた。
結局あの後夜遅かったということもあり2人して抱き合って寝坊した。
起こしに来たリズも邪魔しては悪いとそそくさと退散したことも重なりフェリアとの閣議の報告会を大幅に遅刻してしまったのだ。
フレデリクは笑っている時が一番厳しい、と身を持って知っている2人は軽く恐怖を覚えながら彼の言葉を待つ。
「…リズ様が大体は報告してくれましたから会議は問題なく取り行えました。ルフレさんは前日まで調印で忙しくクロム様も長旅にお疲れでした。よろしいでしょう、今日はゆっくりとお休みください」
「い、いいのかフレデリク?」
意外な言葉に目を丸くし、2人で顔を見合わせてから恐る恐るフレデリクを見上げる。
彼は相変わらず微笑んでいたが、背後でこちらの様子を見守っていたリズが苦笑いしているのを見て嫌な予感がした。
「ええ、これから婚礼の儀で忙しくなりますからね。早速明日にはクロム様には国賓の手配と各国での催し物の打ち合わせ、ルフレさんには婚礼衣装の採寸や王妃としてのダンス、教養レッスンがございます。ここ数カ月のスケジュールを組ましていただきましたが…」
満面の笑みを浮かべるフレデリクが見せてきたびっしりと埋まっているスケジュール表に軽く眩暈がした。空欄が見当たらない、遠目に見れば文字で真っ黒に埋まっている。
彼は確実に怒っている。そう察すると、クロムはルフレの手を握った。
ルフレは突然の行動に顔を少しだけ赤らめつつ、コクリと頷いてくる。
「…逃げるぞ、ルフレ」
「ええ!」
そう言うなり2人はくるりと背を向け絨毯の上を駆け出していった。逃げながらも互いに笑い合い、その姿は未来の聖王夫婦というよりも普通の恋人同士のようで、女官や近衛騎士達は温かく見守りつつ彼等の為に道を避けていく。
好奇心から事の顛末を見守っていたリズは「あちゃ~…」と笑いながら首を竦めフレデリクの様子を伺ってみた。
「お待ちください、話はまだ終わっていませんよ」
緊急時以外は決して廊下を走らない騎士は背筋を伸ばしながら速歩で恋人達を追いかけていく。
しかしその顔は先程のようなどこか威圧感ある笑顔ではなく、安堵が伺える晴れやかで柔和な笑みを湛えていたのだった。
作品解説
断章ルフレとクロムの話です。記憶ありルフレさんはギムレー教団のことでしがらみを感じて、本編よりすさんでいたらいいなと妄想して書いていました。
やっぱりギムレーの器というのはかなりの引け目を感じるのでしょうが、クロムさんだったらそんなこと気にしないで強引に押し切るだろうなという願望が現れています。そんな彼だからこそルフレさんも依存しているんじゃないでしょうか。
月守~とタイトルが似ているのは一応繋がっている設定がありますがあまり生かされていませんね。
失敗したのはフレデリクの相手がある程度固定されてしまうようなセリフを入れてしまったこと。フレスミフレマリフレソワの方に申し訳ない…あとフレオリフレセルか。
一応クロルフ以外のCPに関しての方針としては読み手のご想像にお任せしようと考えているので今後はこのようなことがないようにしたいかと。
ちなみに作者の脳内設定では全編大体リズちゃんが肉さんのお相手です。
某所に投稿した記念すべき覚醒第一弾小説。
クロルフ前提、本編終了後の小さいルキナとマルスとの出会いを書いたお話。
つづきから本編+作品解説です。
クロルフ前提、本編終了後の小さいルキナとマルスとの出会いを書いたお話。
つづきから本編+作品解説です。
「どうしましょう…」
ルキナは途方に暮れていた。
先程までルキナの服をオレンジ色に染め上げていた日差しは陰り、一番星が寂しそうに輝いている。それまで暖かく包み込んでくれていた草花がひんやりとし始め、夢中になって木の実を拾っていた幼いルキナはようやく事態を理解し始めていた。
「おとうさま、おかあさま…」
いつも優しく包み込んでくれる両親を思い浮かべ、涙がこみ上げてくる。
しかしすぐにむっとした顔になり、ぶんぶんと頭を振るった。
―ルキナはお姉さんなんだ―
―ルキナはもうお姉ちゃんなんだから―
最近一日に一回は聞く言葉。
母に抱かれている弟が羨ましくてだっこをせがんでも、フレデリク達に制される。
父クロムも母と弟の傍にいて最近あまり剣術の稽古をしてくれず、リズも従兄弟であるウードを構っており遊んでくれることが減った。
みんな、マークのほうがすきなんだ…
侍女や兵士も、新しく生まれたマーク王子の話ばかりをし、ルキナだけ取り残された気分であった。
ルキナは王女という立場場歳の割には賢明で、それ故あまりしつこく遊んでほしいとも言えず、夜泣きが多いマークの相手に疲れ果てている母に泣きつけず、最近は一人で外遊びをしているのだ。
しかしいつもはルキナの動向に目を光らせているフレデリクは公務で外出しており、それを好機にといつもはいかない場所へと探検に行っていたら、いつのまにか迷ってしまっていたのだ。
どうしよう。
刻一刻と暗くなる世界に、自分に覆いかぶさる木の陰に焦りを感じるが城の者達はみつからない。
父も母も、マークの傍にいて自分がいなくなったと気付いていないに違いない。
ついには足下がみえ辛くなり、木の根に足をとられ転んでしまった。
冷えた草のちくちくとした感触と、膝の痛みに耐えかね、ついに我慢していた涙が零れおちた。
ないちゃだめルキナ。おうじょなんだから、…おねえさん、だから…
自分にそう言い聞かせるも、視界はますます歪んで、かみしめた口からは嗚咽がこぼれる。
おねえさんになんて、なりたくなかった。
マークがいなければ、母は今でも寝る前に本を読んでくれただろうし、大好きな父と稽古できたのに。
…そこまで考えて、ルキナの目からはぽろりと涙がこぼれた。
おとうさまも、おかあさまも、もうルキナのこといらないんだ…
止めようとしても、ぽろぽろと涙がこぼれてくる。
「どうしたの?」
不意に声をかけられ、ぐしょぐしょになった顔を上げた。
「こんな時間に外にいたら、風邪をひくよ」
おとうさまに似ている。しかし、おとうさまにしては背が低い。
青紫に染まった空の下、藍色髪の青年が手を差し伸べてきた。
フレデリクが知らない人に話しかけられてもついていっては駄目です、としつこく言ってくる為一瞬ルキナは躊躇った。だが、クロムとどこか雰囲気が似ている青年であること、一人で心細くなっていたこともあり、素直に彼の手をとってしまう。
「…あなたはだれ?」
黒い仮面をつけた青年は、しばし沈黙する。
おとうさまにも似てるが、もっとよく知っている人に似ている?
ルキナは不思議そうに首を傾げ、綺麗な形をした唇を見つめていると、青年は慌てて顔をそむけた。
「…僕は、マルスだ」
「マルス?おーじさまの?」
マルスという言葉を聞き、ルキナは目を輝かせた。
おかあさまが寝る前に読み聞かせてくれた王子様の名前。
悪竜を倒した大昔の偉い人。彼が竜を倒した剣が、おとうさまの持っているファルシオンだと聞いたことがある。
確かに仮面以外はおとぎばなしのマルスとそっくりで…幼いルキナは気付いてなかったが、このマルスもまた、神剣ファルシオンを携えていたのだ。
憧れの王子様が会いに来てくれた。ルキナが涙を忘れ、頬を紅潮させる半面マルスは少しだけ仮面の奥で罰が悪そうな顔をした。だがすぐに口元に秀麗な笑みを浮かべると姫君に向き合う。
「君が怖い竜にさらわれないよう、迎えに来たんだ。父君と母君が心配している」
城まで送ろう。そうマルスは囁き歩き出そうとするが、父と母と聞いた瞬間ルキナは先程まで泣いていたことを思い出しうつむいてしまう。
「いけません」
「何故?」
「おとうさまとおかあさまは、ルキナのことなんてだいじじゃないんです」
城にいる小さな弟のことを思い出し、ルキナは頬を膨らませた。
城に帰ったら、またおねえさんなんだからと叱られてしまう。おとうさまとおかあさまも怒っているかもしれない。ひょっとしたら、もうルキナと遊んでくれないかもしれない。
思い出したらまた涙がこみあげてきた。マルスの指をぎゅっと握り、いやいやと頭を振る。
「そんなことはないよ、二人は君を大切に想っている」
「だって、マークばっかり…おとうさまはけいこしない、おかあさまはほんをよんでくれない…」
「なるほど、そういうことか…」
懐かしい。そう小声で呟いたが、しゃくりをあげる幼いルキナには聞こえない。
自分にもそんな時期があったのだ。
母の腕に抱かれ、父が生まれたばかりの弟を無愛想ながら笑わそうとしている姿を、むくれた顔で遠巻きに見ていたあの頃。両親の愛情を奪われるかもしれないという無意識の恐怖に襲われ、よく城を飛び出していた。
寂しかったのは事実である。しかし、絶望の中を駆け使命を果たした今、それはとても尊い思い出となり、胸の奥で輝き続けている。
泣いている幼い自分を見て、その思い出の欠片がちくり、と心を刺してきた。
今泣いているこの少女の両親は救われた。しかし、自身の本当の両親はー…
「じゃあ僕が少しお話をしてあげよう、小さな姫君」
ルキナに視線をあわせるよう、マルスは膝をつき肩を持つ。
涙に潤みながらもしっかりと聖痕が刻まれた青い瞳が、こちらをきょとんと見つめてくる。
「おはなし?」
「そう、悪い竜を倒した王様、そしてそれを助けた軍師の物語だ」
「ぐんし?おーじさまのおはなしじゃないの?」
ルキナが泣きやんだことを確認し、マルスはゆっくりと語り始めた。
そう昔じゃない話。君がまだ赤ちゃんだったころ。
あるところに、王様と、彼を手助けする良い軍師がいました。
二人はとても仲良く、イ―リスの平和を見守っておりました。
しかし心優しい軍師は、実は悪い竜だったのです。
悪い竜は倒さなくてはなりません。悪い竜は王様と仲間を呑みこみ世界を真っ暗にしてしまうからです。
良い軍師は王様をふりきって、悪い竜と共に消えてしまいました。
こうして悪い竜は倒されました。しかし、王様はとても哀しみました。良い軍師は、その身と引き換えに世界を平和にしたのです…
「なんでぐんしはきえちゃうんですか?ファルシオンがあればたおせるんでしょ?」
「王様はそうしようとしたんだ。でもね、そうすると悪い竜がまた生れてしまうんだ。
君の子供の子供の子供…随分先になるけど、また悪い竜が出てきてしまう
軍師は未来を守る為に消えたんだ。」
ルキナの知っているおはなしとちがいます。そう呟いて姫君は難しそうな顔をした。
単純明快な物語しか知らない子供にはまだ早かっただろうか。マルスは苦笑いすると、「でもね」と付け足す。
「哀しむ王様の下に、消えたはずの軍師は戻ってきた。何故だと思う?」
「?」
真剣にわからない、そんな顔をしたルキナに、…まだ幼い別世界の自分に微笑みかける。
「軍師にはね、王様がいた。仲間がいた。そして大好きな人との間にできた子供がいた。
その人たちが帰ってきてほしいと願ったから、軍師も、その人たちの下に帰りたいと思ったから帰ってこれたんだ。絆の力で奇跡が起きたんだ」
「きずな?」
「そう、絆。王様の下に、そして君の下に帰りたいから戻ってきたんだ。軍師ルフレは」
おかあさまだ!驚きの声を上げるルキナに頷くと、マルスは小さな手を包み込む。
この手は若い父の亡骸に触れることはない。母の姿をした邪龍に剣を向けることはない。
希望に満ちた世界で老いた父に譲られたファルシオンを握り、母に教えられた知識で民を導くことになるのだ。
…少しだけ羨ましいと思った。しかし妬んでも仕方がない。
例え元の世界に帰ることが出来なくても、自分にはこの世界の為にまだ出来ることがあるはずだ。
もう一つのファルシオンを使って、陰でこの世界の平穏を守ることが出来る。
「君に会いたいと願ったから、君の母君は帰ってきたんだ。父君も、君を守る為に悪い竜と戦った。勿論、君の弟も大事だろう。でも、二人とも君を想っているんだよルキナ」
「…ほんとに?」
「本当さ。英雄は嘘をつかない。その証拠に、ほら」
ルキナの耳に手を沿え、耳をすますように促す。
城がある方角が騒がしいことに気付いたルキナは、目を丸くして見せた。
「二人とも、今頃君を探して大慌てだろうね」
「おとうさま、おかあさま…」
ルキナはさくらんぼ色の唇を噛みしめる。両親に会いたいという気持ちと、怒られるかもしれないという罰の悪さがせめぎあう。
「そんなに心配しなくても大丈夫。二人とも、怒りやしないよ。むしろ駆けよって苦しいくらいに抱きしめてくるに違いない」
フレデリクがしばらく目を光らせてそうだけど。
自分自身の幼い記憶がくすぐったくて自然と笑みをこぼしてしまう。しばらく幼いルキナは忠実な騎士につきまとわれ、不機嫌になることだろう。
しばらく悩むように瞳を揺らしていたルキナであったが、かすかに聞こえた声にぴくりと肩を震わす。
「おとうさま…」
「ふふ、君を呼んでるよ」
お城までエスコートさせていただきます、姫君。
絵本の王子のようにルキナの手を取る。涙に濡れた瞳と視線が合う。
こくり、と頷くのを確認すると、マルスは子供に合わせるようゆっくりと歩き出した。
目指す場所は、新しく空いた壁の穴。
戦いが終わった後、幼い自分と稽古をしたときに父が作った大きい穴があるはずだから。
*
「おとうさま!おかあさま!」
「ルキナ!ああ、無事でよかった…」
「俺が作った壁の穴からでてったのか…通りで見つからないわけだ」
「通りじゃないですクロムさん、壊したら修繕を頼むよう私は何回言えばいいんですか」
「いやー…すまない。ルキナも、ちゃんと俺がみてやればよかった」
「…いえ、私こそマークにかかりきりで。ごめんなさいルキナ、貴女に寂しい思いをさせてしまいましたね」
「ううん、ルキナ、おねえちゃんですから。それに、マルスがね、あいにきてくれたの!」
「マルス?」
「うん、マルスがね―…」
遠ざかる親子の声を聞きながら、ルキナは漆黒の仮面を外した。
ジェロームにもう一つと借りていた仮面が役に立った。両親は気にするなというが、やはり現代の自分へ不用意に干渉してはいけないと戒めている以上姿を偽る必要がある。
それでも知っておいてほしかった。例えギムレーがよみがえることのない世界だとしても、失ってから知る愛を伝えておきたかったのだ。
「いやールキナさんの名演技、噂には聞いていたんですが素晴らしいですね!」
「…見ていたんですか、マーク」
趣味がいいとはいえませんよ。そう咎めると、しげみからひょこっとマークが顔を出した。
記憶が一向に戻る気配のない弟は悪気のなさそうな笑顔を浮かべ、「父さんと母さんが結婚する前の、伝説の姿をみれてよかったですよーかっこよかったです!よ、色男!」と褒められてるのかけなされているのか分らない事を言っている。
「マーク…貴方が生まれたばかりの自分に会いたいというからこんなことになったんです、仮面が無かったらどうなってたかわかりますか」
「そうなんです!僕、すっごく可愛かったんですよ?!覚えてなくて残念だったから見れて良かったです、あ、赤ん坊の頃は誰でも覚えてないですねアハハ」
「…こちらの話を全く聞いてないですね」
僕もその仮面をつけて自分の前にかっこよく登場してみたいです!と相変わらず好き勝手なことを言ってくる弟にルキナは叱る気も失せて苦笑してしまう。
今でこそ底抜けに明るく自由なマークだが、ギムレーが蘇った世界では無理矢理イ―リス王子としてはりついた笑顔を浮かべ、ついには戦乱の中姿を消してしまった。そのことを知っている以上、ルキナは中々マークを叱れず、ついつい甘やかしてしまうのだ。
もう少し経てば、こちらのルキナも言葉を覚えたての弟に手を焼かされることになるであろう。
そんな微笑ましい光景は、かつて自分自身も体験したものだ。二度と戻ることができない、大切な思い出。
「さ、ルキナさん、目的も果たしましたし宿に帰りましょう!僕おなかペコペコです」
相変わらずルキナの感傷も気にせず、自由気ままなマークが手を差し伸べてくる。
弟の手はいつのまにか自分よりも一回り大きくなっていて、思わずルキナは目を細めてしまった。
確かに本当の両親も、弟も、守るべき国も失った。でも今、両親達がつかみとった希望の世界には家族がいる。そして、輝かしい未来が待ち受けているもう一人の自分がいる。
ルキナの中でギムレーを滅ぼす誓いをしてから止まっていた時は、ようやく動き始めたのだ。
「そうですね、帰りましょう」
振り返り、父が壊した穴をみつめる。
その穴の向こうで幼いルキナと遊びながらこちらに微笑みかけてくる両親を確認すると、マークの手を取り、ルキナは柔和な笑みを浮かべて星に照らされる森を歩きだした。
――――あとがき
覚醒創作欲が湧き上がってtwitterで盛り上がり書いたお話です。
ルキナはあまり現代の自分と干渉したくない、出来れば二度と会わない方がいいと考えていたので変装してイーリス城に来てるんじゃないかと。
ト○ロ的な童話っぽさというか。この後もちょこちょこルキナはマルスに変装してチビルキナに会いに行って、チビルキナの初恋の相手になったり、ウードやマーク達を巻き込んで紋章ごっこをしてるんじゃないかと妄想してます。ちなみにシーダ役はブレディちゃんです。
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流離(さすら)
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NLでもBLでもホイホイ食っちまうぜ
ゲームとかガ○ダム大好きな腐り人。
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Serch